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2010年6月22日火曜日

『闘う小説家バルザック』

闘う小説家バルザック
芳川泰久
ISBN4-7967-0219-9
1999年5月
2800円
四六判上製304頁
エディション: 単行本
出版社: せりか書房
出版日: 1999/05
ISBN-10: 4796702199
ISBN-13: 978-4796702195

19世紀初めパリのパサージュを通行する群衆の中に小説の登場人物と読者を発見し、彼らの欲望が織りなす近代社会の縮図を全く新しい知的パラダイムのもとに描いたバルザックの創造の秘密に迫る

バルザックは、現代的なジャーナリズムや出版業界の勃興(ぼっこう)期に身を置き、小説家という新たな「職業」を生きた人間だった。評伝ではなく、出版・パリ・解剖学・三角測量など、核となるテーマや想像力の根源から解明する手法が新鮮。

折しも二百年生誕を機に、日本で五月二十日の誕生日にあわせたかのように、芳川泰久『闘う小説家バルザック』(せりか書房)、石井晴一『バルザックの世界』の二著が出、鹿島茂・山田登世子編バルザック『人間喜劇』コレクション(藤原書店)の第一回『ペール・ゴリオ』の新訳も出た。さらに大矢タカヤス編になるバルザック『人間喜劇』全作品あらすじもその別巻として刊行された。まことににぎわしいバルザックの復権の様である。


目次

1830年〈パリもの〉の誕生
私生活の発見
小説のパサージュ
両性具有—sexualit´eの顕現
「動物」はいかに分類線を横断するか
遠征—異種との遭遇
解剖小説家
活字鋳造・植字・組版
地上を天上に折り畳む論理
〔ほか〕

2010年6月21日月曜日

2010年6/20(日)に掲載された書評

■カフカ Classics in Comics
ヴィレッジブックス 西岡兄妹、フランツ・カフカ著 池内紀訳 価格:¥1,365
評 中条省平(学習院大学教授)
■カフカ自撰小品集
みすず書房 フランツ・カフカ著 吉田太郎訳 価格:¥2,940
評 中条省平(学習院大学教授)

『マネジャー13の大罪—ビジネスの致命傷を避ける法 (BEST OF BUSINESS)』

マネジャー 13の大罪
—ビジネスの致命傷を避ける法—

書籍 四六判 上製 248 ページ
ISBN-13 978-4-532-31625-9
発売日 2010年05月発売
# 単行本: 245ページ
# 出版社: 日本経済新聞出版社 (2010/05)
# ISBN-10: 4532316251
# ISBN-13: 978-4532316259
# 発売日: 2010/05
# 商品の寸法: 19 x 13 x 2.6 cm

「ベスト・オブ・ビジネス」シリーズ最新作。人を使う立場にある人なら誰でも読んで納得できる、時代と業種を超えて通用する普遍的内容の一冊です。
責任をとらない、部下を育てない、目標達成基準を設けない……失敗するマネジャーに共通する13の誤りを回避し、出世に欠かせない「管理職ノウハウ」をマスターせよ!
全米の管理職に25年以上も愛読されてきた名著。

大罪その1:結果に対して責任をとらない:効果的な仕事をするには、マネジャーが責任を持たねばならない
大罪その2:部下の育成を怠る:マネジメントの目的は、時間の経過や人事異動、当事者の不在などがあっても事業が継続すること
大罪その3:やる気を起こさせない:生産性の高いレベルで仕事をすることが自分には無理だと思っているスタッフの態度を改めさせること
大罪その4:組織内での立場を忘れる:上級管理者に対して「彼ら」といった代名詞を使っていればそのマネジャーは経営に参加しているとはい
えず、正しい態度であるとは言えない。
大罪その5:部下と一対一で接しない:うまく行かないマネジャーは、個人的な接触を避けたがり、そこで部下をひとまとめにしていちどきに対処し ようとする。
大罪その6:利益の重要性を忘れる:利益を上げない限り、どれだけすばらしい製品、販売、PR、社員であっても、すぐにトラブルに陥ってしまう。
大罪その7:問題点にこだわりすぎて目的を見失う:時間がないという多くのマネジャーは、売上げの1割にしか影響しないことに9割の時間をかけている
大罪その8:部下との間に一線を引かない:少なくとも会社の一番大事な顧客に対してやらないことは、部下にも決してしてはならない
大罪その9:目標達成基準を設けない:個人や企業のプライドを高めるために設定する
大罪その10:部下の実務能力を過信する
大罪その11:部下のたるみに目をつむる:不満足な仕事には目をつぶるべきではない。そのためには、対立を回避しないことが重要である。対決の仕方としてはGAPが役立つ。
G:意見を言わせる(Get his opinion)
A:実行すべきことについて合意する(Agree what will be done)
P:望ましい行動を積極的に強化する(Positiveli reinforce the desired behavior)
大罪その12:成績のよい部下だけに目をかける:利益を上げている企業は、実績が中位の信頼できる勤勉な社員と、少数のスーパースターの上
に事業を構築している。したがって、中位の社員に気を配るべき
大罪その13:アメとムチで部下を操ろうとする:部下に生産性を上げさせるためには
・恐怖
・報酬
・信念を育てるもの
のいずれかしかない。

T・G・マサリク『ロシアとヨーロッパ ロシアにおける精神潮流の研究 』

ロシアとヨーロッパ—ロシアにおける精神潮流の研究 (1)
ISBN4-915730-34-4 C0022
A5判上製376頁
定価5040円(本体4800円+税)
2002.10

チェコの思想家T・G・マサリク(1850-1937)はロシア研究家としても名高く、そのロシア研究の集大成が本書である。この著作は、ロシア精神史研究の古典として知られ、各国語に訳されており、邦訳も、第1、2巻については、かつてみすず書房から『ロシア思想史』の題名で出されている(現在は絶版)。今回の邦訳は、まだ日本語に訳されていない第3巻を含めた全3巻を、プラハのマサリク研究所が厳密な校訂を経て刊行したチェコ語版(1995-6
年)から訳したものである。

第1部「ロシアの歴史哲学と宗教哲学の諸問題」では、ロシア精神を理解するための前提として、ロシア国家の起源から第一次革命に至るまでのロシア史を概観する。第2部「ロシアの歴史哲学と宗教哲学の概略」では、チャアダーエフからゲルツェンまでの思想家たちを検討する。

* 目次

+ はしがき
+ 序 ロシアとヨーロッパ——ロシアの僧侶
1. ロシアの歴史哲学と宗教哲学の諸問題
1. 「聖なるルーシ」——第三のローマとしてのモスクワ
2. ピョートルの改革。ロシアとヨーロッパの結合
3.
フランス革命後の神権政治的反動と、セヴァストーポリに臨んでのその敗北。政治的、哲学的革命の始まり。(エカテリーナ二世——ニコライ一世)
4. 一八六一年の農奴解放と行政改革
5.
束の間の自由主義の後の、ニコライ体制の復活と継続。——テロリズム的ゲリラ革命の発展と、その犠牲者としてのアレクサンドル二世。——強化された神権政治的反動とその反テロリズム。日本との戦争における神権政治的反動の敗北
6. 最初の大衆革命と憲法の始まり。反革命
7. ロシアの歴史哲学と宗教哲学の諸問題(総括)
8. ロシア研究のための文献
2. ロシアの歴史哲学と宗教哲学の概略
1.

9. P・J・チャアダーエフ。正教の神権政治に対するカトリックの神権政治
10. スラヴ主義。正教の神権政治のメシアニズム。スラヴ主義と汎スラヴ主義
11. 西欧主義。V・G・ベリンスキー
12. 西欧主義とスラヴ主義との統合。アポロン・グリゴーリエフ
13. アレクサンドル・ゲルツェン。哲学的、政治的急進主義
+ 訳者あとがき
+ 人名索引


ロシアとヨーロッパ—ロシアにおける精神潮流の研究 (2)
# 単行本: 508ページ
# 出版社: 成文社 (2004/06)
# ISBN-10: 4915730352
# ISBN-13: 978-4915730351
# 発売日: 2004/06
# 商品の寸法: 21.2 x 15.6 x 3.8 cm

ISBN4-915730-35-2 C0022
A5判上製512頁
定価7245円(本体6900円+税)
2004.06

チェコの思想家T・G・マサリク(1850-1937)はロシア研究家としても名高く、そのロシア研究の集大成が本書である。この著作は、ロシア精神史研究の古典として知られ、各国語に訳されており、邦訳も、第1、2巻については、かつてみすず書房から『ロシア思想史』の題名で出されている(現在は絶版)。今回の邦訳は、まだ日本語に訳されていない第3巻を含めた全3巻を、プラハのマサリク研究所が厳密な校訂を経て刊行したチェコ語版(1995-6
年)から訳したものである。

第2部「ロシアの歴史哲学と宗教哲学の概略」(続き)では、バクーニンからミハイローフスキーまでの思想家たち、反動家たち、より新しい思想潮流を検討する。第3部第1編「神権政治対民主主義」では、西欧哲学と比較したロシア哲学の特徴を析出し、ロシアの歴史哲学的分析を行う。

* 目次

2. ロシアの歴史哲学と宗教哲学の概略(続き)
2.

14. M・A・バクーニン。革命的アナーキズム
15. リアリズムとニヒリズム。チェルヌィシェフスキーとドブロリューボフ、ピーサレフ
3.

16. ラヴローフとミハイローフスキー。いわゆる社会学的な主観主義者
4.

17. 公的な神権政治の理論家たち——カトコーフ、ポベドノースツェフ、レオーンチエフ
18. ウラヂーミル・ソロヴィヨーフ——神秘主義としての宗教
5.

19.
現代の社会主義——マルクス主義と社会民主主義。マルクス主義とナロードニキ主義。マルクス主義における危機。宗教問題——社会革命党
20. 現代のアナーキズム——P・クロポトキン。アナーキズムと社会主義
21. 自由主義
22. 革命主義の危機によせて——宗教問題
3.

1. 神権政治対民主主義——革命の問題
23. ロシア哲学における認識論の問題
24. ロシア哲学の宗教問題
25. 神権政治対民主主義
26. 民主主義と革命
27. 聖なるルーシ——ロシアの修道僧とフォイエルバッハ
+ 人名索引


ロシアとヨーロッパ—ロシアにおける精神潮流の研究 (3)
# 単行本: 474ページ
# 出版社: 成文社 (2005/09)
# ISBN-10: 4915730360
# ISBN-13: 978-4915730368
# 発売日: 2005/09
# 商品の寸法: 21 x 15.4 x 3 cm

ISBN4-915730-36-0 C0022
A5判上製480頁
定価6720円(本体6400円+税)
2005.08

チェコの思想家T・G・マサリク(1850-1937)はロシア研究家としても名高く、そのロシア研究の集大成が本書である。この著作は、ロシア精神史研究の古典として知られ、各国語に訳されており、邦訳も、第1、2巻については、かつてみすず書房から『ロシア思想史』の題名で出されている(現在は絶版)。今回の邦訳は、まだ日本語に訳されていない第3巻を含めた全3巻を、プラハのマサリク研究所が厳密な校訂を経て刊行したチェコ語版(1995-6
年)から訳したものである。

第3部第2編「神を巡る闘い——ドストエフスキー」は、本書全体の核となるドストエフスキー論であり、ドストエフスキーの思想を批判的に分析する。第3編「巨人主義かヒューマニズムか——プーシキンからゴーリキーへ」では、ドストエフスキー以外の作家たちを論じる。

* 目次

3.


+ まえがき
2. 神を巡る闘い——ロシア問題の歴史哲学者としてのドストエフスキー
+ ドストエフスキーの伝記
+ ドストエフスキーの公式
1. ニヒリズム——アナーキズム的無神論
2. ゾシマ——宗教哲学(ニヒリズムを克服するロシアの修道僧)
3. フォイエルバッハ対修道僧
4. 大審問官
5. 異端者ゾシマ——懐疑主義者ドストエフスキー
6. 哲学と教養
7. 宗教と道徳I
8. 宗教と道徳II(カラマーゾフ主義)
9. 殺人と自殺
10. ドストエフスキーの公式は誤っている
11. ロシアの全人
12. 人間性と民族性。民族性と宗教
13. ショーヴィニズム。人名の浪費
14. ロシア的性格
15. ロシアとヨーロッパ
16. 外交政策——内政に勝る外交
17. 内 政
18. ツァーリズム
19. ベリンスキーからウヴァーロフへ

3. 巨人主義かヒューマニズムか——プーシキンからゴーリキーへ
+ ロシア文学と世界文学におけるドストエフスキー
1. A・S・プーシキン
2. オネーギン——ファウスト
3. G・G・バイロン
4. ミュッセのローラ
5. M・J・レールモントフ
6. N・V・ゴーゴリ
7. I・A・ゴンチャローフ
8. I・S・トゥルゲーネフ
9. L・N・トルストイ
10. デカダン派
11. M・ゴーリキー
+ 結論
+ 断片
+ マサリクとロシア——ヨーロッパから見たロシア——石川達夫
+ 人名総索引

『ページと力 手わざ、そしてデジタル・デザイン』

ページと力
手わざ、そしてデジタル・デザイン

鈴木 一誌 著
200210刊/四六判/390頁
C1070 定価2940 円(本体2800 円)
ISBN4-7917-6000-X


ページを生み、書物を生み出す力が世界を動かす。
デジタル時代を迎えたデザインは、「情報を公開する技術」としての性格を強め、そこに出現した文字は、言葉とのズレと不安にふるえている。グラフィック・デザイン界きっての論客が、デザインの基本と実践を詳細に分析、「ページネーション」「フォーマット」というキーワードを、文字とテクスト、文学・芸術と〈作者〉、さらには現代文化・社会そのものを見直すための概念へと鍛え上げる。

本書はタイポグラフィに関する素材が豊富に解説されその真髄を追及しているが,単なるグラフィックアーツ関連のハウツウ本でもないところに意義がある。タイポグラフィに関して,広角な視点から分析および解析をしている。


ページネーションとは,本来「丁付け」という意味に使われ,その後「ページを構成する文字・図形・画像を一括してレイアウトすること」という意味として捉えられていた。しかし本書では,「一つずつの活字を拾うことで行になり,行が集まってページとなる。ページネーションとは,本の1ページを生み出していく行為でありつつ,同時にページ相互の連続性を誕生させていくことだ」と述べている。

【目次】

まえがき ページを生み出す力

1 文字
    タイポグラフィとはなにか
    文字の不安
    滲む文字
        うさぎという漢字
        文字は実在するか
        グリフという運動
        ひとつの意味、ひとつのかたち
        文字コード問題とはなにか
        包摂は編集である
    東大明朝を解説する
    テクストは文字の集合か 東大明朝「六万四千漢字」を批評する
    書くことの孤独から 石川九楊「文学は書字の運動である」をめぐって
    書体の向こうの鈴木勉

2 デジタル化されるデザイン
    集合名詞としての作者
    デザインとことば
    日本語の特質とデザイン
    印刷という定点
        印刷する権利
        刷り出し立ち合い
        印刷工場で
        校正と本機のちがい
        完全な見当はない
        一色がむずかしい
        特色という概念
        インキを盛る
        印刷会社のこれから
        手の記憶
        段ボール印刷という文化

3 ページネーション
    ページネーションは生命の活動である
    ページネーションとは
    『シカゴ・マニュアル』との出会い
        マニュアルの世紀の「究極の一冊」
        ランニング・ヘッド
        DTPとマニュアル
        ちがいの証言
    「ページネーション・マニュアル」の提起
    行を演出する

4 フォーマット
    版面の内と外
    フォーマットの誕生
    しごとの角度
        三〇分の一
        次郎長三国志
        技術をもち運ぶ
        専門家を定義する
        「しごと大好き」が前提か
    余白は孤独ではない
    衝突する場としてのページ

5 法とデザイン
    知恵蔵裁判とはなにか
    知恵蔵裁判を語る
    本文がない
    見える/見えない 「知恵蔵裁判」と『知恵蔵裁判全記録』

6 テクストから書物へ
    その場から身をひき剥がす
    書物の敷居学 ジェラール・ジュネット 『スイユ テクストから書物へ』
    デザインという空間
        流動する平面
        見たいものだけを
        輪郭偏重の世界観
        時間とデザイン
        ステップを刻む
        原稿用紙
        ファンシーからファインへ
        濁点はなぜふたつか
        自分を編む
    平面と立体 杉浦康平と書物
    文学にフレームを与える 菊地信義の装幀
    切断する傍点 金井美恵子 『重箱のすみ』

7 間メディア
    線的思考 複製論3

あとがき
索引
初出・もとになった原稿

ページネーションのための基本マニュアル
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[著者] 鈴木一誌(すずき・ひとし)
1950年東京生まれ。
グラフィック・デザイナー。
東京造形大学在学中より杉浦康平のアシスタントをつとめ、85年独立。
装幀ばかりでなく、
本文、図版レイアウトを含めた書物全体の設計にたずさわるブック・デザインをしごとの中心とする。
93年から現代用語辞典 『知恵蔵』 の本文レイアウト・フォーマットをめぐって朝日新聞社と著作権裁判を争ういっぽう(99年敗訴)、
96年、デジタル・デザインでページを生み出すための基本ルール
『ページネーション・マニュアル』 を提起し、著作権フリーで公開。
また「文字コード問題」にも積極介入するなど、旺盛な執筆活動を展開、
81年、第一回ダゲレオ出版評論賞を受賞以来、映画評論家としても活躍し、
映画本の造本・装幀も多く手がける。
著書に、2001年 『知恵蔵裁判全記録』(共著、太田出版)、
2002年 『画面の誕生』(みすず書房)などがある。

2010年6月13日日曜日

『民主主義理論の現在』

イアン・シャピロ 著
中道 寿一 訳

四六判/上製/280頁
初版年月日:2010/03/31
ISBN:978-4-7664-1722-7
定価:3,360円
慶應義塾大学出版会株式会社

マキァヴェリ、ルソー、マディソンからフーコー、シュンペーター、ダール、ドウォーキンらまでを俯瞰し、分裂した現代社会にふさわしい政治理論の再構築を試みた、現代アメリカ政治理論の重鎮の重要著作、待望の本邦初訳登場。
▼「権力と民主主義」「熟議民主主義ははたして有効か?」「司法の力はどのように利用されるべきか」などさまざまな課題に対し、シャピロは分裂した現代社会に有効な民主主義のかたちを提示しようとする。

目次

序 文

序 章

第1章 共通善
 第1節 共通善の集約的概念
 第2節 共通善に関する熟議的概念
 第3節 理想的状況下での熟議?

第2章 支配か熟議か
 第1節 権力論
 第2節 インサイダーの知恵と上位の善
 第3節 熟議による支配の制限
 第4節 熟議対交渉

第3章 権力と民主的競争
 第1節 支配を制限するための権力構成
 第2節 シュンペーター的競争
 第3節 司法審査の役割とは何か
 第4節 裁判所と中庸的立場

第4章 民主主義の実現と維持
 第1節 民主主義への移行と定着
 第2節 集団権の規範的防御

第5章 民主主義と分配
 第1節 供給サイド
 第2節 需要サイド
 第3節 分配形式の効果
 第4節 民主主義と分配の意味

第6章 民主主義理論の現状を再考する

訳者あとがき
参考文献
索引

イアン・シャピロ『民主主義論の現在』の意義について
(訳者あとがきより)


中道 寿一
北九州市立大学法学部教授

 本書は、イアン・シャピロの著書としては初めての邦訳であるが、すでに、1990年8月にサンフランシスコで開催されたアメリカ政治学会での報告「民主主義者である三つの方法」("Three
ways to be a democrat." Annual meeting of the American Science
Association in San Francisco, California, August
1989)の邦訳がある(岡本仁宏「〈資料〉イアン・シャピロ『民主主義者である三つの方法』—翻訳と紹介」)。その「紹介」においても指摘されているように、「民主的アリストテレス主義」に基づくシャピロの論述スタイルは極めて「論争的」であり、その定式化は「明快かつラディカル」である。(中略)

 本書は、そもそも民主主義は何を目的としているのかという、民主主義の基本目的の再概念化を試みたものである。著者によれば、民主主義とは、「支配を極小化するために権力関係をうまくコントロールする手段である」と述べているように、共通善、一般意思の表明を目的とするというよりも、支配の制限ないし極小化を目的とすべきものなのである。したがって、本書の目的は、「民主主義理論の現状を、民主政治の現実的な運用に即して再評価すること」であり、本書の視点は、具体的な制度や体制の構想(デザイン)にある。しかも、支配および権力の制限ないし極小化は、特定の状況において弱く傷つきやすい人々に利益をもたらす限りにおいて意義があるということを前提としている。したがって著者は、民主主義の規範理論や民主化に関する経験的研究、権力の本質に関する議論を駆使しながら、民主主義を、権力から切り離された真空状態においてとらえるのではなく、ヒエラルヒーや権力不均衡という現実の権力関係の中においてとらえるべきだとする。すなわち、現実の権力関係をどのようにコントロールすれば支配を極小化することができるかということについて考察を進めている。

 その一つとして、しばしば批判の対象となるシュンペーターの代議制(エリート主義的)民主主義論を、政治的合意ではなく政治的競争という視点から、再評価する。また、今日盛んに議論されている熟議民主主義に関して現実主義的洞察を行っている。たしかに熟議は、弱く傷つきやすい人々を守るために必要であり重要であるが、現実の権力関係が熟議にどのような影響をもたらしているかということや、熟議が合意ではなく不一致や深い亀裂をもたらしていることも考慮に入れるべきであると主張して、熟議民主主義に対して一定の距離をおいている。さらに、著者は、弱い人びとの声を強めるためにも、司法的チェックが必要であると主張する。ただし、ここで言う司法的チェックとは、民主主義の行き過ぎに対する自由主義的なチェックではなく、「民主主義の自動制御的性格」として捉えられるべきチェックである。すなわち、司法的チェックは、ここでは、民主的プロセスにおいて生じる支配を阻止したり改善したりすることへの積極的参加として捉えられる。そして、最後に著者は、深い文化的亀裂のある政治的共同体において民主主義を維持できるかどうかという問題についても重要な議論を提供している。すなわち、「多極共存型民主主義」(レイプハルト)論についてさまざまな角度から検討を加えながら、分裂した社会における「選挙競争」や「区画横断的な連合形成」を可能にする民主的な制度設計(デザイン)について論究している。(後略)



イアン・シャピロ
(Ian Shapiro)
1956年生。1983年イエール大学で政治学博士号取得、1985年レオ・シュトラウス賞受賞、1987年イエール大学ロースクールで法学博士号取得。現在、イエール大学政治学部
Sterling Professor、同大学マクミラン国際地域学センター所長。
主要著作:
The Real World of Democratic Theory(Princeton UP, 近刊)、Containment:
Rebuilding a Strategy against Global Terror(Princeton UP, 2007), The
Flight from Reality in the Human Sciences(Princeton UP, 2005),
Democratic Justice(Yale UP, 1999), Democracy's Place(Cornell UP, 1996)


中道 寿一
(なかみち ひさかず)
1947年生。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。
法学博士。現在、北九州市立大学法学部教授。
主要著作
『カール・シュミット再考』(ミネルヴァ書房、2009年)、『政治思想のデッサン』(ミネルヴァ書房、2006年)、『現代デモクラシー論のトポグラフィー』(日本経済評論社、2003年)ほか多数。

『ディドロ限界の思考 小説に関する試論』

ディドロ 限界の思考
 小説に関する試論
田口卓臣 著
●ISBNコード 978-4-7599-1761-1
●判型 A5
●ページ数 310頁
●発行年月日 2009-11-30
●価格 7,875円(本体 7,500円)
出版 : 風間書房

▼解説
18世紀フランスを代表する思想家、ドニ・ディドロの小説に関する日本で初めての本格的な研究書。傑作『運命論者ジャックとその主人』の訳者による長年の研究成果をまとめた本書は、フィクションを介して人間の限界の認識を表現するディドロ独自の方法を丹念にあぶりだすことによって、誤解と偏見にあふれた「啓蒙主義」のイメージを一掃する野心作でもある。

【著者略歴】
田口卓臣(たぐち たくみ)
1973年生。2007年東京大学大学院博士後期課程修了、博士(文学)。
現在、宇都宮大学専任講師(フランス文学・思想)。

▼目次詳細
序 文
第一部 小説の方法
 �章 特権的な話者の不在
  1:一方向的な語り
     『修道女』 不在の読者へのよびかけ
     『ブルボンヌの二人の友』 相対化されつづける証言
  2:双方向的な語り
     『ラモーの甥』 対話者間の葛藤
     『これは作り話ではない』 聴き手に邪魔される語り手
  3:重層的な語り
     『ド・ラ・カルリエール夫人』 世間の一員としての語り手
     『ブーガンヴィル航海記補遺』 転倒につぐ転倒
 �章 作品世界の俯瞰不能性
  1:物語の予測不能性
     唐突な始まり—コント三部作の冒頭
     アクシデントの連続—『ある父とその子どもたちの対話』を中心に
     終わりの宙吊り—『ミスティフィカシオン』を中心に
  2:翻訳と欠落
     『おしゃべりな宝石たち』 「原典」から遠く離れて
     『ブーガンヴィル航海記補遺』 「自然」の成形の不可避性
 �章 『運命論者ジャックとその主人』
  1:証言とその主体
     方法としての多声性
     あらゆる話者の限界
  2:不可知なものの明示
     「運命」としての物語、その不可知性
     決定的な「原典」の不在、物語の欠落・断片化
第二部 個としての人間
 �章 認識、判断、その限界
  1:全知の不可能性
     「水星の周転円の上」、「みじめな学問」—『ラモーの甥』における二つの比喩
     戦場のなかの個—『運命論者ジャックとその主人』におけるある描写の場面
     「仮説」を壊す「実験」—『おしゃべりな宝石たち』第一巻・第二十九章のアレゴリー
  2:認識、判断、その決定不能性
     記号の解釈の分裂—馬の「お告げ」と「葬列」の意味
     善悪の決定不能性—グッスの人物像を中心に
 �章 意志、統御、その限界
  1:意志、統御、その限界
     自由意志の否定—ジャックの召使遍歴
     意図と結果の齟齬—宿屋の「おかみ」とタニエ
     言葉と行動の齟齬—ジャックとセネカ
     意識と身体—デブロッスの証言
  2:誘惑、陰謀、その帰結
     「私」、グッス、ド・サンフロランタン家の執事、ユドソン
     ド・ラ・ポムレー夫人とド・サントゥアン騎士
     ジュザンヌ
 �章 懐疑と肯定
  1:懐疑と肯定
     ビュリダンの驢馬の不可能性—『ダランベールの夢』の一節
     懐疑と次善の選択—『哲学断想』と『ある父とその子どもたちの対話』
     「後世」にむけて—『ド・ラ・カルリエール夫人』と『運命論者ジャックとその主人』における矯正可能性のテーマ
  2:この世界の肯定
     運命論による自己解放
     この世界の肯定
     交換不能な個の生成—ジャック、デロシュ、フェリックス
第三部 個と共同体
 �章 性愛と一夫一婦制
  1:可変性の原理
     絶えざる生成変化—『盲人に関する書簡』におけるソーンダーソンの世界観
     「雲」、「霧」、ラモー
  2:性愛の逆説
     性愛の可変性—『運命論者ジャックとその主人』の一節、『これは作り話ではない』におけるガルドゥイユの発言
     貞節、嫉妬、その不可避性
  3:一夫一婦制の不可能性と不可避性
     出会い、結婚、その破錠—コント三部作、『運命論者ジャックとその主人』
     一夫一婦制の外見と内実—『おしゃべりな宝石たち』
     一夫一婦制の心理的・政治的機能—『ブーガンヴィル航海記補遺』
     一夫一婦制の不可避性—「三つの法典」の分析を中心に
 �章 一夫一婦制のオルタナティヴとその限界
  1:優学生とその破錠—ユートピア批判としての『ブーガンヴィル航海記補遺』
  2:「みんな」に攻囲される「私」—監獄批判としての『修道女』
     監獄としての修道院
     監視、処罰、スペクタクル
     遍在する監視網
     逸脱する「私」、その生理と戦略
  3:無法者たち、その友愛の共同体—マンドランの一党、ブルボンヌの密輸入
  補論:規範からの逸脱
     「酵母」としてのラモー
     通り、街道、宿屋—コードなき旅人たちの空間
     哲学者(フイロゾフ)、あらゆるものの批判者
結 論
  1:本研究の成果
  2:本研究の限界と今後の展望


参考文献
あとがき

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