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2010年8月3日火曜日

『ブリューゲル全版画』

タイトル ブリューゲル全版画
タイトルよみ ブリューゲル ゼン ハンガ
責任表示 ベルギー王立図書館編
出版地 東京
出版者 岩波書店
出版年 1974
形態 図95枚 133p ; 40×52cm(解説:38cm)
注記 監修:ヘルマン・リバース 日本語版監修:土方定一 解説:ルイ・ルベール 訳者:二宮敬等
注記 帙入
入手条件・定価 38000円
個人著者標目 Brueghel,Pieter (1525?-1569)

プレート図版95枚揃

16世紀ネーデルラントの巨匠ピーテル・ブリューゲル(1525/30-69)は日本人にとても親しまれている画家です。ブリューゲルは聖書の世界、諺、子供の遊び、民衆の祝祭、農民の労働の主題を描いています。特に寓意をこめた作品では人間の弱点や愚行を諷刺と教訓、ユーモア精神によって表現しています。私たちはこうしたブリューゲルの芸術からヨーロッパの民衆文化の"ルーツ"や当時の道徳観を知ることができます。
 ブリューゲル版画は不特定多数の購買層のために制作されたので、当時の人々のさまざまな関心に応えています。例えば、アルプスの大自然の雄大さ、諺や「徳目」シリーズでの日常生活のあり方、《誰でも》や《錬金術》での人間の貪欲な姿、縁日を祝う民衆の解放感、船舶シリーズでの高度な造船技術などを伝えています。ブリューゲルの非凡な表現力はヨーロッパ中の評判となり、まさに16世紀の版画芸術の頂点に達したのです。さらに時空を超え、現代人の心に語りかけてきます。

ベルギー王立図書館が誇る国宝級のコレクションは、非常に良い状態で保存され、あたかも刷りたてのようなみずみずしい美しさを鑑賞していただけます。

ブリューゲルが民衆の姿を生き生きと捉えた縁日や季節の労働の主題は当時のコンテンポラリーアートとして人気を博し、同時代・次世代の画家たちに引き継がれていきました。描かれたキリスト教的な教訓や日常生活に密着した諺は人々の道徳観や生きる知恵を物語っています。

ヨーロッパで最も関心の高かったテーマ

■雄大なアルプス山脈の賛美と近郊の田園風景への親近感 The Homage to the Landscape
ブリューゲルは1551年、親方としてギルドに登録した後、イタリアに2,3年旅行した。帰国後、彼の仕事は「大風景版画」シリーズ用にアルプスの雄大な風景を制作することだった。切り立った巨峰の連山、大気感にあふれる広大な渓谷、対角線上にじぐざぐに流れる川などの構図で人々を魅了した。

■聖書の主題や宗教的な寓意を描く Biblical Subjects and Religious Allegories
ブリューゲルは《聖アントニウスの誘惑》や「七つの罪源」シリーズにおいて、画面に蠕動する奇怪な怪物や幻想的な構築物を導入しながら、約40年前に他界したヒエロニムス・ボスに接近しようとした。だが「七つの徳目」シリーズでは日常生活での道徳の実践を描き、ここの「徳目」にかつてない斬新な図像を創案した。

■武装帆船やガレー船の驚くべき表現力 The Detailed Expression of the Armed Ships
16世紀中期のアントワープはヨーロッパでも有数の国際商業都市として繁栄した。都市に面したスヘルデ川は諸外国からの船舶で賑った。船舶シリーズは貿易商人、仲買人、探検家だけでなく、多種多様な外国船に興味を抱く国際的な購買層を対象とした。ブリューゲルは海上の暴風雨に耐え、海賊船の不意の襲撃に応酬できる武装帆船を細部にわたり、船舶技術者のような目で描写した。

■人間観察と道徳教訓の世界 The World of Moral Allegories and Fools
16世紀はエラスムスを始め、人文主義者たちが活躍する時代で、版画の主題や銘文にも彼らの人間観・道徳観が反映されている。ブリューゲルは生涯を通じ、「人間とは何か」を問い続けてきた思想家でもあったが、家族をどん底に落とした《錬金術》、貪欲な商人を風刺する《金銭の戦い》などで、物欲に対する人間の愚行を風刺した。

■諺を通じて知る「青いマント」の世界 The World of the "Blue Cloak" observed through Proverbs
16世紀は諺の黄金時代を迎え、ヨーロッパ各地で多くの諺集の編纂・出版が行われた。人々は中世での「往生術(死への心得)からルネサンスの「現世での生き方」へと方向転換し、「民衆の知恵の房」である諺に強い関心をもった。造形美術の世界でも、諺を主題とした彫刻、版画、絵の全盛時代であったが、ブリューゲルは画面に何気なく諺を挿入したり、一点の作品に一つの諺を浮き彫りにするなど、諺の視覚化に意欲的だった。

■民衆文化や民話への共感 The Compassion for Popular Culture and Tales
村の縁日や農民の婚礼の踊りはブリューゲルの同時代の画家たちも描いている。しかしブリューゲルは彼らのように都会人の視線で農民を冷ややかに観察するのではなく、日ごろの重労働から解放され、村総出で祭りを楽しむ農民たちに親近感を抱いた。縁日の主題では宗教行事、路上劇、輪舞、スポーツ、ゲームなどをまるで動画のように描いている。

■四季や月暦表現で綴る市民の祝祭や農民の労働 Labors and Feasts from the Cycle of Seasons and Months
四季や月歴に関する貴族の愉しみや農民の労働はすでに中世の聖務日課書や時祷書に描かれていた。しかしブリューゲルは《夏》で、従来の並列的な営みではなく、水を飲んだり、大鎌を振って麦を刈る農民たちにスポット当て、大胆な構図に挑戦した。

当時の版画事情
描く人・彫る人・発行する人―版画ビジネスの誕生

15世紀までは多く、下絵、彫版、発行のすべてをひとりで行っていたのに対し、16世紀には工程の分業化が進んだ。まず画家によって下絵素描が製作され、それを専門の彫版師や発行者の手を経て版画商品として市場に出た。国際的な経済の中心地として急激な発展を遂げたアントワープに、1548年、「四方の風」という屋号の版画店を開業したヒエロニムス・コックは、マーケティング・リサーチを行ない、購買者たちの関心のあるテーマを発行した。それらは古代の廃墟、アルプスの雄大な風景や身近なフランドルの農村風景、民衆の祝祭、著名なイタリア・ルネサンス絵画の複製、建築用装飾図案などであった。彼はヨーロッパのみならず世界中にその販路を広げ、一大版画出版ビジネスの拠点を築きあげたのである。

版画による豪華なコレクション図録

ブリューゲルの油彩画を数多く所有するウィーン美術史美術館は、17世紀半ばにネーデルラント総督を務めたヴィルヘルム大公の豊かなコレクションに基礎を置いている。実はコレクションはすべて版画化されて、図録に記録された。こうした版画図録は当初大公の命によって刊行された後、大公の死後、コレクションが帝室の所有となると、帝室美術品ギャラリー図録として刊行され、版を重ねた。現在でも人気の高いブリューゲルの《バベルの塔》は、予約注文による豪華版図録『絵画芸術の劇場』を飾っている。一頁一点の見事な複製版画213点を収録した全4巻に及ぶこの豪華な図録からも、当時の複製版画の需要の一端が垣間見える。

著者紹介
ピーテル・ブリューゲル(1525/30-1569)

ピーテル・ブリューゲルは、16世紀ネーデルラントの最も偉大な画家である。1551年、アントワープの聖ルカ組合に親方として登録後、数年間、イタリアに滞在した。帰国後、アントワープで国際的な版画店を営むヒエロニムス・コックの許で、1555年から版画の下絵素描を数多く制作した。1563年にブリュッセルに移住し、師ピーテル・クック・ヴァン・アールストの娘マイケンと結婚。1569年、同地で病死する。

《主題と作風》
1559年頃から油彩画の制作に専念。大気感の溢れる風景表現、活気ある民衆文化の百科全書的な再現、深い省察による人間の道徳批判などは当時のハプスブルク家の為政者や人文主義者たちから高い評価を得た。さらに美術史上、初めて農民の世界を親近感のある眼差しで高い芸術性の対象とした。

《版画と油彩画》
ブリューゲルの版画作品と油彩画の相互関連性はきわめて重要である。版画での合成風景、主題を賑わす「づくし」的手法、多数の人物が登場する広場構図、民衆の日常生活の導入などがモニュメンタルな油彩画の中で昇華した。逆に農民の労働を描いた油彩画が後年の版画《春》《夏》のイメージ源となった作例もある。
ネーデルラント絵画史におけるブリューゲルの役割は計り知れない。その芸術は彼の二人の息子、孫、ひ孫たちだけでなく、ポスト・ブリューゲルの画家たちによって継承された。

ベルギー王立図書館 Koninklijke Bibliotheek van Belgie(Belgium)
 http://www.kbr.be/
アルベールⅠ世図書館
Bibliothèque Royale de Belgique
Koninklijke Bibliotheek van België
開館時間:月~金 9:00~16:45 土 9:00~12:00、13:00~16:45
休館日:日曜
住所:Boulevard de l'Empereur/Keizerslaan 4, 1000 Brussels
TEL:02-5195311 FAX:02-5195533

芸術の丘 (Mont des Arts)
ブリュッセルの下町と山の手を結ぶフランス式庭園の公園で市民の憩いの場になっています。南東の丘の上からは素晴らしい眺望が楽しめます。南西側は王立図書館、東側は王立美術館、パレ・デ・ボザール(コンサートホール)、楽器博物館がある芸術広場です。

『デューラーと名声 芸術家のイメージ形成』

秋山 聰 著
B5判上製函入
口絵18頁
本文372頁
挿図213点
価格/24,150 円(税込)
ISBN978-4-8055-0397-3
# 出版社: 中央公論美術出版 (2001/03)
# ISBN-10: 4805503971
# ISBN-13: 978-4805503973
# 発売日: 2001/03
# 商品の寸法: 27.2 x 19.2 x 3.8 cm

■内容紹介

生前より一貫して名声を保ち続けた画家デューラーが、どのようにして名声を意識し希求したかを分析する。作品中に仕掛けられた技量の誇示(デモンストレーション)などを指摘し、美術の展開に果たした名声のメカニズムの役割を明らかにする。巻末には15、16世紀ヨーロッパにおける「描かれた蝿」の作例を網羅した作品カタログを掲載する。
【地中海学会ヘレンド賞】

イタリアに対する文化的劣勢の克服を願っていたドイツ人文学者たちにとって、デューラーは希望の星に映ったにちがいない。画家が共同体の名誉を高め、広く喧伝するに学者以上に有効な存在であることを彼等はイタリアにおける先例から熟知していた。彼等はデューラーに待望久しい文化的英雄としての可能性を看て取った。いまやデューラーの使命はイタリアにおいて己の技量を認めさせることにあったといえる。このような状況下の第二次イタリア旅行において、デューラーがどのように効果的に技量を誇示したのか、が本書の主たるテーマとなる。

第2次イタリア旅行において、デューラーはどのように効果的に技量を誇示したのか。意図的に鑑賞者の関心を作品から制作者へと導くこの時期の作品の仕掛けを具体的作例に即して検討し、デューラーの名声形成の構造を解明する。

■目次

デューラーの自己成型:"1500年の自画像"を中心に
第二次イタリア滞在における技量の誇示
 描かれた蠅
 速筆
 醜い形象
 異なる作風の併用
デューラーと名声のメカニズム

■著者紹介

長崎出身。1986年東京大学文学部美術史卒業、同大学院博士課程中退、フライブルク大学で博士号取得、電気通信大学助教授、東京学芸大学助教授、2002年『デューラーと名声』で地中海学会ヘレンド賞受賞、2007年東京大学准教授。09年『聖遺物崇敬の心性史』でサントリー学芸賞受賞。

■エッセイ

「SPAZIO」第65号 (July, 2006) 【電子化第3号】
デューラーの《二皇帝像》と聖なる見世物
秋山聡 (あきやま あきら 東京大学助教授)
http://www.nttdata-getronics.co.jp/profile/spazio/spazio65/akiyama.htm

「SPAZIO」第63号 (June, 2004) 【電子化第1号】
ドイツ美術はなぜ「醜い」か
秋山聡 (あきやま あきら 東京学芸大学教育学部助教授)
http://www.nttdata-getronics.co.jp/profile/spazio/spazio63/akiyama.html

「SPAZIO」 62号 2003年4月発行
デューラーの《蝿》をめぐる謎 ─── 秋山 聰

日本語-チェコ語 チェコ語-日本語の両引き辞典

<国際語学社>
『簡明日本語−チェコ語 チェコ語−日本語辞典』 阿部 昇吉 編著
税込価格 : \3675 (本体 : \3500)
著者 阿部 昇吉 編著
ジャンル 諸外国語 > ロシアと近隣諸国の言葉 > チェコ語
シリーズ 簡明辞典
出版年月日 2010/07/29
ISBN 9784877315221
判型・ページ数 B6・304ページ
定価 本体3,500円+税

■内容紹介
簡明シリーズ第五段!日本語-チェコ語 チェコ語-日本語の両引き辞典。
 1万1,000語収録の「簡明辞典」シリーズ第五弾は、チェコ語です。チェコは九割がチェコ人の占めるスラヴ系民族の国家。
 チェコ語はもちろん、ロシア語にも精通した著者が送る渾身の一冊です。チェコ語勉学者のバイブルとなること間違いありません。


■目次
1.著者前書き
2.表記について
3.チェコ共和国国歌
4.チェコ語の基本会話
5.チェコ語アルファベット一覧
6.日本語引き
7.チェコ語引き
8.四季、月、曜日、数字一覧
9.写真で綴るチェコ

2010年8月2日月曜日

後藤忠政『憚りながら』宝島社

# 単行本: 317ページ
# 出版社: 宝島社 (2010/5/15)
# ISBN-10: 4796675477
# ISBN-13: 978-4796675475
# 発売日: 2010/5/15
# 商品の寸法: 19.2 x 13 x 2.8 cm
インタビュアー:ジャーナリスト西岡研介

かつて伊丹十三監督・襲撃事件などで日本社会を震撼させた武闘派団体・後藤組の後藤忠政組長。
08年10月に山口組を電撃引退し、翌年には天台宗系の浄発願寺で得度(得度名=忠叡)。日本中をあっといわせたのは記憶に新しい。
それから1年……財界・政界にも大きな影響力を発揮し、山口組の直参として、日本の深層を生き抜いた後藤忠政とは、いかなる人物なのか?
本書は、半年にわたる延べ50時間のインタビューを構成したもので、
これまでその人物像が明かされることのなかった伝説の組長の生い立ち、静岡県富士宮を舞台にした愚連隊時代、山口組直参昇格、竹中正久4代目の思い出、
山一抗争、伊丹十三襲撃事件、孤高の民族派・野村秋介との交友、企業社会への進出、政界との交流、武富士との攻防、山口組引退の真相
そして自身の人生哲学から女性哲学までが、たっぷりと語られる。激動の半生を送ってきた人物が語り下ろす、今年、注目度ナンバーワンのノンフィクション!!

後藤組といえば、「伊丹十三襲撃事件」。92年、映画監督の伊丹氏が後藤組組員に襲撃され、顔面などを刃物で切られ重傷を負った。民事介入暴力を描いた映画『ミンボーの女』に対する報復だった。この件につき、後藤氏は組員が勝手にやったことと述べるだけでなく、「ヤクザとしてのプライドを持っている者なら、誰がやってもおかしくないと思っていた」「ヤクザの社会では拍手喝采」とまで言い切っている。現在、得度したという者の言葉とはとても思えない。

創価学会について1章分割き、かつてやった裏仕事(学会の墓苑造成反対住民を襲撃するなど)について暴露。
池田大作名誉会長について、「一番の悪はやっぱり裏で"汚れ仕事"させといて、表では善意に満ち溢れた教祖サマ面している、池田大作」と述べている。
「一番の悪はやっばり裏で、山崎だの、�だのに�汚れ仕事�させといて、表では善意に満ち盗れた教祖サマ面してる、池田大作だろうな」

UCLAに多額の寄付をして渡米、生体肝移植の手術。前科7犯、指定暴力団直参元組長で通常はビザも下りないはずだが、FBIすら黙らせる。

オドラデクに関する日本語名エッセイ 澁澤龍彦『思考の紋章学』所収

思考の紋章学-7-オドラデク
『文芸』 15(4), p156-165, 1976-04

和図書 1−6(6件)

1. 思考の紋章学 / 澁澤龍彦. -- 新装新版. -- 河出書房新社, 2007.3. -- (河出文庫)
2. 渋沢竜彦全集. 14. -- 河出書房新社, 1994.7
3. 思考の紋章学 / 渋沢竜彦. -- 白水社, 1988.5. -- (新編ビブリオテカ渋沢竜彦)
4. 思考の紋章学 / 渋沢竜彦. -- 河出書房新社, 1985.10. -- (河出文庫)
5. ビブリオテカ渋沢龍彦. 6 / 渋沢龍彦. -- 白水社, 1980.3
6. 思考の紋章学 / 渋沢龍彦. -- 河出書房新社, 1977.5

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オドラデク跳梁--ドラコニアの1960年代 (渋沢竜彦<特集>)
高山 宏
ユリイカ 20(7), p123-135, 1988-06

異端の日本学の系譜--「しろうるり」とオドラデク (渋沢竜彦--幻想のミソロジ-<特集>) -- (批評・渋沢竜彦のビブリオテカ)
野口 武彦
国文学 解釈と教材の研究 32(8), 60-67, 1987-07

上野俊哉『思想家の自伝を読む』

上野俊哉『思想家の自伝を読む』
平凡社ライブラリー
2010年7月15日配本、翌日以降書店店頭に並びます。
(地域によって多少異なりますのでご了承ください)
336ページ
定価903円(税込)
ISBN978-4-582-85537-1

■「序章」抜粋

 「自分探し」を口にする学生や若い人に、
 わたしが決まってかけている言葉がある。
 残酷なようだが、「自分探しなんてするな」、
 「探すような自分なんてそもそもあるの?」、
 「自分なんてものを探しているヒマがあったら、
 むしろ自分が出会った他者やモノに徹底してこだわれ」・・・。
 (・・・)
 思想家や知識人の自伝について批評を試みた本書の
 究極の目的は、実はこのことに尽きる。

 この世界はもっと広いということ、
 様々に異なる文化や言語をもった地域には
 実にいろいろな他者たちがいて、
 様々なモノがあることを知ってほしい。
 「自分探し」にやっきになるくらいなら、
 とりあえず先人の試みた「自己についての記述」に
 一通り当たってみたらどうだろう?
 自伝を読むことで、すこしだけ他人の生を生きてみなよ、
 そんなふうに言いたい気分がある。
 自分に関心をもつ、自分を探すなんてヒマがあるのなら、
 人が自己について語った言葉をまず掘ってみな、
 と言いかえれば、もっとわかりやすいだろうか。
 (9-10ページ)


■目次
序章 不良中年が思想家の自伝を読みなおすきっかけ

第一章 書物という他者たちから語る
テリー・イーグルトン『ゲートキーパー』(大月書店)
ジョージ・スタイナー『G・スタイナー自伝』(みすず書房)
コリン・ウィルソン『発端への旅』(中公文庫)

第二章 自己を語ることの策略
ルイ・アルチュセール『未来は長く続く』(河出書房新社)
ジャン=ポール・サルトル『言葉』(人文書院)
ミシェル・レリス『成熟の年齢』(現代思潮社)

第三章 抵抗する自己の生
きだみのる『人生逃亡者の記録』(中公新書)
大杉栄『自叙伝』(岩波文庫)
林達夫『歴史の暮方』(中公文庫/中公クラシックス)

第四章 死ぬことを学ぶ、自己を語りはじめる
エドワード・サイード『遠い場所の記憶』(みすず書房)
谷川雁『北がなければ日本は三角』(河出書房新社)

文献案内/あとがき

■著者紹介
上野俊哉。1962年生まれ。
刊行当時、和光大学総合文化学科表現学部教授。
専門は文化研究、メディア論、社会思想史など。
和光大学ウェブサイト掲載の自己紹介文(2010.8.2確認)。
「専門としているのは、文化研究、メディア論、社会思想史など。ずっとロックやレゲエを聴いて育ってきたし、マンガやアニメをよく見るので、そうした
大衆文化やサブカルチャーについての研究や批評も守備範囲のうち。教育姿勢としては、あたりはキツいが、やる気と努力の人には甘い。

 趣味は野外のテクノパーティやハコで踊ったり、お皿回しの真似事(DJごっこ)したり、クルマをかっとばしたり、B級なんちゃってなりに料理したり
すること・・・など。

 ここ数年は、日本の大衆文化/サブカルチャーが日本の外からはどのように見られているのか? また日本のアニメ、マンガ、特撮、テクノ、グラフ
ティ・・・などから引き出せる考え方って何だろう? といったことを、これまでの学問や思想、批評とつきあわせながら考察しようとしている。

 坂口安吾や三島由紀夫をゴスやパンクの'かたわらで'考えるとか、戦中戦後の日本の思想家たち(中井正一、花田清輝など)の「日本文化」についての目線をサブカルチャーの視点から読みなおす、といった作業にとりくんでいる。

 放っておくと、ふだんでもアニメや特撮の台詞や身ぶりを、日常の真面目な場面でぽろっと出したりする。「萌え」というよりは「燃え」系の人格だが、ときおり客員教授を務めるカナダのマギル大学などでは、きっちり真面目に「オタク」や「萌え」を英語で定義して解釈したりもしている。

 自分の好きなことでお金がもらえたり、趣味を仕事にしたりするのは、大変なこともあるけれど、その方が明らかに人生は楽しい。なので、若いうちに、たとえ漠然とでも、自分の人生=生活の将来についてヴィジョンをもってみるといい。日本以外の社会では普通のこういうことが、だんだんこの国/社会では異例なことになっていることに、どういう事態かと頭をひねっている。

 馴化された家畜のように生きるより、おもしろ、おかしく、はみだした動物や植物のように生きよう。 」

2010年7月28日水曜日

暗がりのあかり——チェコ写真の現在展

主催:
株式会社 資生堂
会期:
2010年6月19日(土)~8月8日(日)
会場:
資生堂ギャラリー
〒104-0061
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel:03-3572-3901 Fax:03-3572-3951
平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00 毎週月曜休 入場無料
*7月19日は祝日ですが休館いたします
後援:
チェコ共和国大使館
Czech Centre Tokyo

チェコ共和国の首都プラハは、スラブ文化圏における芸術文化の中心的役割を担ってきました。1910年代末よりダイナミックな前衛芸術運動が展開され、チェコ・アヴァンギャルドがおこるなど、中欧のみならずEU、ロシア等、他地域へも多大な影響を与えています。また近年では、日本でもブックデザインや絵本、アニメーション映画をはじめとするチェコの独特な芸術文化への人気が高まっています。
本展では、その芸術文化の一翼を担う写真表現に焦点をあわせ、現代のチェコを代表する下記の10名の写真家を紹介します。
ウラジミール・ビルグス、 ヴァーツラフ・イラセック、 アントニーン・クラトフヴィール、
ミハル・マツクー、 ディタ・ペペ、 イヴァン・ピンカヴァ、 ルド・プレコップ、トノ・スタノ、
インドジヒ・シュトライト、テレザ・ヴルチュコヴァー

写真の創成期より連綿と続く伝統と歴史を継承し、新たな表現を開拓し続けてきたチェコ写真の現在を、ポートレート、風景、フォトモンタージュ、ドキュメンタリーなど多岐に渡る彼らの作品を通して紹介します。

1830年代半ばの写真登場直後より、チェコ・スロバキアにも写真技術は伝わり、当時から多くの写真家たちが活躍していました。そして1990年以降、写真が芸術表現の手法として用いられるようになるとともに、同国からフランティシェク・ドルティコル、ヨゼフ・スデック、ヤン・サウデック、ヨゼフ・コーデルカなど、多くの重要な写真家が輩出されてきました。1991年のソビエト連邦解体から自由化を経て、旧共産圏の芸術文化が一挙に世界中へ広まりましたが、チェコの写真表現もその潮流にのり、欧米をはじめとする西側諸国へと広く知れ渡ることとなりました。そして1998年から99年にかけて、バルセロナ、パリ、ローザンヌ、プラハ、ミュンヘンの5都市で「モダンビューティー:チェコ・アヴァンギャルド写真1918-1948」展が開催され、チェコの写真芸術を世界的に認知させることとなりました。また2005年には、プラハ工芸美術館とプラハ市ギャラリーの2館を会場に、「チェコ20世紀写真展」が開催されました。同展は、チェコ国内で初めて20世紀におけるチェコ写真の歴史と発展を紹介するという趣旨のもと、400人以上のチェコ・スロバキア人写真家による作品約1300点が出品され、その後2009年にドイツ・ボンの国立芸術展覧会ホールへも巡回しています。

本展は、その独特な表現と作品水準の高さで世界的に注目を集めるチェコ写真の現在を紹介する、日本初の展覧会となります。モノクローム写真を主流として独自の発展を続けてきたチェコ写真を現在最も注目を集める10名の写真家の作品約50点を通してお楽しみください。

ウラジミール・ビルグス
Vladimír Birgus
1954年 チェコ共和国フリーデク=ミーステク生まれ
都市風景や人々を題材に構成的な作品を撮る。写真家としてのほか、教育者、写真研究家としても活躍
ヴァーツラフ・イラセック
Václav Jirásek
1965年 チェコ共和国カルヴィナー生まれ
ポートレートや風景に荒廃、死といった耽美的イメージを重ね合せ、それらが引き起こす人間の反応を表現
アントニーン・クラトフヴィール
Antonín Kratochvíl
1947年 チェコ共和国ロヴォシッチェ生まれ
ポートレートとドキュメンタリー写真の領域で活躍、ドラマチックなルポルタージュで世界的名声を獲得
ミハル・マツクー
Michal Macků
1963年 チェコ共和国ブルンタール生まれ
アイデンティティの喪失と破壊をテーマに、独自の技法による"Gellage"シリーズを制作
ディタ・ペペ
Dita Pepe
1973年 チェコ共和国オストラヴァ生まれ
現代社会における多様な女性たちをテーマに、自身がその対象に扮する「Self-portraits」シリーズを制作
イヴァン・ピンカヴァ
Ivan Pinkava
1961年 チェコ共和国ナーホト生まれ
神話や古典、中世の巨匠による絵画作品からのインスピレーションをもとに聖書を題材にした作品を制作
ルド・プレコップ
Rudo Prekop
1959年 スロバキア共和国コシツェ生まれ
ステージド・フォトグラフィの領域において紙の断片や鏡の破片などを用いるなど、独創的な作品を制作
トノ・スタノ
Tono Stano
1960年 スロバキア共和国ズラテー・モラフツェ生まれ
女性の身体をモチーフに、独創的で洗練されたモノクローム写真を制作
インドジヒ・シュトライト
Jindřich Štreit
1946年 チェコ共和国フセチーン生まれ
世界的に活躍するドキュメンタリー写真家。世界各地を廻り、素朴な人間の存在と美しさをテーマに撮影
テレザ・ヴルチュコヴァー
Tereza Vlčková
1983年 チェコ共和国フセチーン生まれ
少女をモデルに、場所・時代が漠然とした、神話や寓話を思わせる神秘的なイメージの作品を制作

朝日新聞夕刊評(2010年7月28日)
『チェコの空気ムンムン「暗がりのあかり」 銀座で写真展』

グローバル化が進んでも、美術作品にはその国の空気を感じさせるものがある。東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催中の「暗がりのあかり――チェコ写真の現在展」は、チェコの空気に満ちた展覧会だ。同国の写真表現の全体像を紹介しようと、20~60代の幅広い年代から10人を選び、49点を展示。分野別に壁に並べた。

 ドキュメンタリー写真では、インドジヒ・シュトライトが近代化で失われつつあるチェコの田舎暮らしを、アントニーン・クラトフビールが戦争や民族対立に揺れる中東欧を撮る。

 ヌード写真の分野で、トノ・スタノはポーズを取ったモデルの裸を写す。「センス」(1992年)では女性の身体が官能的な一本の曲線に。ミハル・マツクーは、写真上で自分の裸体を引き裂く。モノクロームの作品の中には、耽美(たんび)的だったり、不穏や疎外を感じさせたりするものが多い。

 テレザ・ブルチェコバーのカラー写真も不気味だ。作品には双子の少女が並んで写るが、中にはデジタルで合成した偽の双子もいるという。

 チェコの人口は日本の10分の1以下。だが、担当した資生堂の井関悠学芸員は「写真家の層は厚い。伝統と歴史を尊重した上で自分のスタイルを追求している」と話す。

 首都プラハは、スラブ文化圏の芸術の中心地の一つ。重々しくて濃密なチェコの空気を感じることができる写真展だ。(西田健作)

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Aufzeichnungen zu Franz Kafka (1883-1924)