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2010年10月12日火曜日

『文学作品が生まれるとき 生成のフランス文学』

田口紀子・吉川一義 編
菊上製・528頁・税込 5,250円
ISBN: 9784876989492
発行年月: 2010/10

内容
文学作品はどのように生まれたのか?「生成研究」という研究分野がフランスに誕生して以来、近年めざましい成果をあげている。本書はフランス文学の著名作家の草稿研究を土台にして、文学誕生のためのさまざまな方法論を明らかにしながら、文学とは何であるのかというより本質的な問題に迫る。

目次
序章 生成論の射程 [田口紀子]
1 文学作品が誕生するためには
2 生成研究の方法
3 本書の構成

第Ⅰ部 規範と創造

第1章 詩人バイフの旧約聖書詩篇翻案の生成——十六世紀における詩と音楽の奇妙な結合 [伊藤玄吾]
1 旧約聖書詩篇の翻案とバイフ
2 バイフの三つの詩篇翻案手稿の比較
3 「見出された」バイフの作品
コラム ドゥルオ会館における古書・自筆稿類の競売[吉井亮雄]

第2章 ラシーヌ悲劇の生成過程[永盛克也]
1 ラシーヌの自筆草稿について
2 ラシーヌ悲劇の「生成」研究——模倣とレトリックの観点から
3 悲劇の創作過程——詩学と劇作法の観点から
4 『タウリケーのイフィジェニー』のプラン
5 『ブリタニキュス』におけるテクストの記憶
第3章 ルソーの『告白』における夜明けの光景と描写詩[井上櫻子]
1 「啓蒙」の世紀に、詩は衰退したのか
2 『告白』第四巻における「幸福な一日」の描写
3 『四季』の歌の系列
4 循環する時間意識と再生への願い
5 むすびにかえて——ルソーの「独自性」とは?
研究ノート 作家の「独自性」とは—アンシャン・レジーム期の文学と「系列的アプローチ」 [井上櫻子]

第Ⅱ部 変奏と転調

第4章 ジェラール・ド・ネルヴァル——変奏の美学 [水野 尚]
1 総合的生成研究に向けて
2 草稿の文献学的研究
3 同一素材再利用とネルヴァルの美学
4 同一の異なったテクスト——民謡集のネルヴァル的変奏
コラム ロヴァンジュール文庫 [鎌田隆行]
第5章 フロベール『ボヴァリー夫人』の生成——ラリヴィエール博士の人物像の解釈をめぐって [松澤和宏]
1 「没個性」の美学とラリヴィエール博士
2 プラン・筋書きにおけるラリヴィエール博士の人物描写
3 下書き初期段階における人物描写の造形
4 下書き後半の段階における人物描写の彫琢
5 ラリヴィエールの登場
6 オメ家での昼食
7 隣人愛と博愛主義の間
第6章 ランボー『地獄の季節』生成の一面——一八七二年の詩における「教訓的な声」 [中地義和]
1 『地獄の季節』の言語
2 一八七二年の韻文詩における「教訓的な声」
3 主題論的転置(韻文詩のモティーフの散文への取り込み)
4 結び
第7章 カミュ『幸福な死』から『異邦人』へ [三野博司]
1 カミュにおける生成研究
2 『幸福な死』と『異邦人』の生成
3 退屈な日曜日——メルソー、ムルソー、ロカンタン
コラム 現代出版資料研究所(IMEC) [桑田光平]
第8章 レーモン・クノーの自伝的エクリチュール、あるいは消去の技法 [久保昭博]
1 文学と抹消
2 自伝と叙情
3 技法と構成——『最後の日々』
4 記憶と語り——『オディール』
5 叙情主体の回復——『柏と犬』
6 生成研究について

第Ⅲ部 時代の中での創造

第9章 ルソーにおけるリズム論と夢想の詩学 [増田 真]
1 ルソーにおける音楽論と創作技法
2 ルソーの音楽論におけるリズムの位置
3 リズムと夢想
研究ノート 十八世紀の草稿——地下文書と手書きの完成品 [増田 真]
第10章 プルーストと写真芸術 [小黒昌文]
1 写真をめぐる日常
2 写真の芸術性
3 「機械の眼」が突きつける「現実」
コラム 近代テクスト草稿研究所(ITEM)とは [吉川一義]
第11章 サルトル作品における生成研究の可能性——『自由への道』を中心に [澤田 直]
1 草稿資料の現状
2 代表的な生成研究
3 『自由への道』をめぐって
4 『自由への道』への新たなアプローチ
5 生きることと書くこと

第Ⅳ部 草稿が語るもの

第12章 パスカルの『パンセ』——「中断された作品」の生成論 [塩川徹也]
1 『パンセ』という書物は存在するか
2 未定稿の編集と出版
3 テクスト生成論の前提と限界
研究ノート バルザックの作品生成と研究の現状 [鎌田隆行]
第13章 フロベール『ブヴァールとペキュシェ』における教育と自然 [和田光昌]
1 ある個人的信念
2 第十章の書き出しにおける「自然」
3 奇妙な一文
4 自然と神の摂理
5 教育のわざと書くことのユートピア
研究ノート フロベールの草稿研究の現状 [松澤和宏]
研究ノート ゾラに関する生成研究の現状 [吉田典子]
第14章 ジッド『狭き門』の成り立ち——構想・執筆から雑誌初出、主要刊本まで [吉井亮雄]
1 ジッド研究の現状と学術版の作成
2 『狭き門』の着想と執筆過程
3 自筆稿・タイプ稿・校正刷
4 主要刊本の概略
第15章 プルースト草稿研究の基礎と実践 [和田章男]
1 プルースト草稿研究の基礎
2 プルースト草稿研究の実践1——ジルベルト登場場面の生成過程
3 プルースト草稿研究の実践2——ジルベルトとサンザシ
4 生成研究の展望
コラム フランス国立図書館手稿部での日々 [吉川一義]
第16章 コラージュの残骸の美とハーモニー——カイエ34における花咲く乙女たちの物語の素描 [加藤靖恵]
1 「カイエ34」について
2 少女たちの挿話における画家の役割
3 印象派の海の絵と水の精の乙女たち
4 少女たちの名前をめぐって
5 変容し続ける印象とエクリチュールの増幅
6 画家のパレット、少年のまなざし
第17章 ポール・ヴァレリーと生成の詩学 [森本淳生]
1 ヴァレリー研究と草稿
2 詩(へ)の回帰
3 行為と詩学
4 待機と偶然
5 出来事としてのポイエイン
コラム ジャック・ドゥーセ文庫 [吉井亮雄]
第18章 シュルレアリスムと手書き文字の問題——鳥たちからの伝言 [鈴木雅雄]
1 加筆というアポリア
2 変形から反復へ
3 声と手書き文字
4 鳥たちからの伝言

あとがき [吉川一義]

人名索引
プロフィール
[編者紹介]
田口 紀子(たぐち のりこ)
 1953年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。パリ第4大学文学博士。現在京都大学大学院文学研究科教授。専門はフランス語学、テクスト言語学。
 主要業績:『身体のフランス文学―ラブレーからプルーストまで』(吉田城と共編、京都大学学術出版会、2006年)、「フィクションとしての旅行記―メリメの『カルメン』に見る「スペイン性」の表象」(『グローバル化時代の人文学―対話と寛容の知を求めて
上』京都大学学術出版会、2007年)ほか。

吉川 一義(よしかわ かずよし)
 1948年生まれ。1977年、パリ第4大学文学博士、東京大学大学院博士課程満期退学。東京都立大学教授を経て、京都大学大学院文学研究科教授。専門は近現代フランス文学。
 主要業績:『プルースト美術館』(筑摩書房、1998年)、Index général de la Correspondance de
Marcel Proust(共編、京都大学学術出版会、1998年)、『ディコ仏和辞典』(共著、白水社、2003年)、『プルーストと絵画』(岩波書店、2008年)、Proust
et l'art pictural(Champion, 2010)など。

[執筆者紹介(執筆順)]
伊藤 玄吾(いとう げんご)
 1970年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。現在、同志社大学言語文化教育研究センター助教。専門はルネサンス文学・思想・音楽。
 主要業績:「ジャン=アントワーヌ・ド・バイフの韻律法改革の実像」(『フランス語フランス文学研究』、日本フランス語フランス文学会、2005年)、「エチエンヌ・パスキエの韻律論―『フランス考』第7巻を中心に」(『関西フランス語フランス文学』日本フランス語フランス文学会関西支部、2007年)など。

吉井 亮雄(よしい あきお)
 1953年生まれ。東京大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。パリ第4大学博士課程修了(博士号取得)。現在、九州大学大学院人文科学研究院教授。専門はフランス近現代文学。
 主要業績:André Gide, Le Retour de l'Enfant prodigue, Édition critique
(Presses Universitaires du Kyushu, 1992) ; Bibliographie chronologique
des livres consacrés à André Gide, 1918―2008(Centre d'Études
Gidiennes, 2009. クロード・マルタンとの共著)など。

永盛 克也(ながもり かつや)
 1964年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。パリ第4大学文学博士。現在、京都大学大学院文学研究科准教授。専門は17世紀フランス文学、古典悲劇。
 主要業績:≪Racine et la catharsis ≫(Equinoxe, no 15,
1998)、『ラシーヌ劇の神話力』(共著、上智大学出版会、2001年)、『身体のフランス文学』(共著、京都大学学術出版会、2006年)、«
Racine et Sénèque »(XVIIe siècle, no 248, 2010)

井上 櫻子(いのうえ さくらこ)
 1977年生まれ。パリ第4大学博士課程修了。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。現在、慶應義塾大学文学部助教。専門は18世紀フランス文学。
 主要業績:« L'influence de Burke dans Les Saisons de Saint-Lambert »
(L'Éloge lyrique, Presses universitaires de Nancy, 2008), « La
fonction morale de la rêverie dans La Nouvelle Héloïse »(Études
Jean-Jacques Rousseau, no 17, 2009)、『ブローデル歴史集成III
日常の歴史』(共訳、藤原書店、2007年)など。

水野  尚(みずの ひさし)
 1955年生まれ。慶應義塾大学文学研究科博士課程単位認定退学。パリ12大学(クレテイユ)文学博士。神戸海星女子学院大学文学部教授を経て、2008年より関西学院大学文学部教授。専門は19世紀フランス文学。
 主要業績:『物語の織物―ペローを読む』(彩流社、1997年)、Nerval L'écriture du voyage, Champion,
2003、『恋愛の誕生 12世紀フランス文学散歩』(学術選書、京都大学学術出版会、2006年)、Gérard de Nerval et
l'esthétique de la modernité, Hermann, 2010(共編書)。

鎌田 隆行(かまだ たかゆき)
 1967年生まれ。名古屋大学文学研究科博士課程およびパリ第8大学博士課程修了。現在、名古屋大学文学研究科専任講師。専門は19世紀フランス文学と生成批評。
 主要業績:La Stratégie de la composition chez Balzac. Essai d'étude
génétique d' Un grand homme de province à Paris(駿河台出版社、2006年)。

松澤 和宏(まつざわ かずひろ)
 1953年生まれ。1988年パリ第8大学文学博士、筑波大学大学院文芸言語研究科博士課程満期退学。現在、名古屋大学大学院文学研究科教授。フランス国立科学研究センター近代テクスト草稿研究所フロベール班メンバー、ソシュール研究所Texto!編集委員。専門は19世紀フランス文学。
 主要業績:Introduction à l'étude critique et génétique des manuscrits de
L'Education sentimentale de Gustave Flaubert†: l'amour, l'argent, la
parole(France Tosho, Tokyo, 1992, diffusion Nizet,
渋沢・クローデル賞)、『生成論の探求』(名古屋大学出版会、2003年、宮沢賢治賞奨励賞)。『「ボヴァリー夫人」を読む―恋愛・金銭・デモクラシー』(岩波書店、2004年)など。

中地 義和(なかじ よしかず)
 1952年生まれ。東京大学教養学科卒。同大学院人文科学研究科博士課程修了。パリ第3大学博士(1985年)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。専門はフランス近代詩。
 主要業績:Combat spirituel ou immense dérision ? Essai d'analyse textuelle
d' Une saison en enfer, Corti, 1987
;『ランボー、自画像の詩学』(2005年、岩波書店)など。『ランボー全集』(共編訳、青土社、2006年)、モンサンジョン『リヒテル』(翻訳、筑摩書房、2000年)、ル・クレジオ『黄金探索者』(翻訳、河出書房新社、2009年)など。

三野 博司(みの ひろし)
 1949年生まれ。京都大学卒。クレルモン=フェラン大学博士課程修了。奈良女子大学文学部教授。専門は20世紀文学。
 主要業績:Le Silence dans l'æuvre d'Albert Camus (Corti,
1987).『カミュ「異邦人」を読む』(彩流社、2002年)、『カミュ
沈黙の誘惑』(彩流社、2003年)、『「星の王子さま」事典』(大修館書店、2010年)。

桑田 光平(くわだ こうへい)
 1974年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。パリ第4大学文学博士(2009年)。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院講師。専門は20世紀フランス文学・美術。
 主要業績:La « moralité » de Roland Barthes,
2009(博士論文)、「空白の経験―デュブーシェとジャコメッティ」(『仏語仏文学研究』第36号、2008年)、ル・コルビュジエ/ポール・オトレ『ムンダネウム』(共訳、筑摩書房、2009年)。

久保 昭博(くぼ あきひろ)
 1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。パリ第3大学フランス文学・文明研究科博士。京都大学人文科学研究所助教。専門は20世紀フランス文学・文学理論。
 主要業績:「小説に組み込まれた神話─ミシェル・ビュトールの小説におけるジャンルの問題」(『早稲田文学』第3号、2010年)、Raymond
Queneau et la question des genres,
2006(博士論文)、ミシェル・ヴィノック『知識人の時代』(共訳、紀伊國屋出版、2007年)。

増田  真(ますだ まこと)
 1957年生まれ。東京大学教養学部卒、東京大学人文科学研究科博士課程単位取得退学、パリ第4大学博士課程修了。一橋大学社会学部助教授を経て、現在、京都大学大学院文学研究科准教授。専門は18世紀フランスの思想と文学。
 主要業績:田村毅・塩川徹也編著『フランス文学史』(共著、東京大学出版会、1995年)、朝比奈美知子・横山安由美編著『はじめて学ぶフランス文学史』(共著、ミネルヴァ書房、2002年)、ル・メルシエ・ド・ラ・リヴィエール『幸福な国民またはフェリシー人の政体』(翻訳、岩波書店、「ユートピア旅行記叢書」、2000年)。

小黒 昌文(おぐろ まさふみ)
 1974年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。京都大学文学博士(2005年)。現在、駒澤大学総合教育研究部専任講師。専門は19世紀末から20世紀初頭のフランス文学・社会文化史。
 主要業績:『プルースト 芸術と土地』(名古屋大学出版会、2009年)、フィリップ・フォレスト『荒木経惟
つひのはてに』(共訳、白水社、2009年)、Marcel Proust 6―7 (actes du colloque
international « Proust sans frontières »), Lettres Modernes Minard,
2007―2009(共同編集)。

澤田  直(さわだ なお)
 1959年生まれ、パリ第1大学哲学博士。現在、立教大学文学部教授。専門は現代フランス文学・思想。
 主要業績:『〈呼びかけ〉の経験』(人文書院、2002年)、『新・サルトル講義』(平凡社、2002年)など。サルトル『真理と実存』(人文書院、2000年)、『言葉』(人文書院、2006年)、『自由への道』(共訳、岩波文庫、2009年より刊行中)、J=L・ナンシー『自由の経験』(未來社、2002年)、フィリップ・フォレスト『さりながら』(白水社、2008年、日仏翻訳文学賞)、ほか多数。

塩川 徹也(しおかわ てつや)
 1945年生まれ。東京大学教養学部卒。パリ・ソルボンヌ大学博士課程修了。東京大学名誉教授。専門は近世フランスの文学と思想。
 主要業績:『パスカル 奇蹟と表徴』(1985年)、『虹と秘蹟―パスカル〈見えないもの〉の認識』(1993年)、『パスカル『パンセ』を読む』(2001年)、『パスカル考』(2003年)、『発見術としての学問―モンテーニュ、デカルト、パスカル』(2010年)
以上、岩波書店刊。

和田 光昌(わだ みつまさ)
 1962年生まれ。早稲田大学文学研究科フランス文学科博士後期課程修了。パリ第8大学文学博士(1995年)。現在、西南学院大学文学部教授。専門は19世紀フランス文学。
 主要業績:Roman et éducation, étude génétique du chapitre X de Bouvard et
Pécuchet de Flaubert (Atelier national de la reproduction des thèses,
1995) ; « Magnétisme et phrénologie dans Madame Bovary »(Madame Bovary
et les savoirs, Presses Sorbonne nouvelle, 2009)、A.
コルバン編『身体の歴史2』(共訳、藤原書店、2010年)。

吉田 典子(よしだ のりこ)
 1953年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。現在、神戸大学大学院国際文化学研究科教授。専門は19世紀フランス文学・社会文化史・視覚文化論。
 主要業績:『身体のフランス文学』(共著、京都大学学術出版会、2006年)、「ゾラとマネ:共和主義者の共闘」(『表現文化研究』第9巻第1号、2009年)、アラス『モナリザの秘密』(翻訳、白水社、2007年)、ゾラ『ボヌール・デ・ダム百貨店』(翻訳、藤原書店、2003年)など。

和田 章男(わだ あきお)
 1954年生まれ。大阪大学文学研究科博士課程単位取得退学。パリ第4大学第3課程文学博士。現在、大阪大学文学研究科教授。専門はプルースト研究。
 主要業績:『フランス表象文化史―美のモニュメント』(大阪大学出版会、2010年)、Index général des Cahiers de
brouillon de Marcel
Proust(科学研究費成果報告書、2009年)、『フランス文学小事典』(共編、朝日出版社、2007年)。

加藤 靖恵(かとう やすえ)
 1966年生まれ。パリ第3大学博士課程修了。大阪大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。現在、名古屋大学大学院文学研究科准教授。専門は19―20世紀文学と美術批評。
 主要業績:Etude génétique des épisodes d'Elstir dans A la recherche du
temps perdu(駿河台出版社、1998);« Proust et Mantegna » (Bulletin Marcel
Proust, 2009) ; « L'unité thématique du Cahier 64 : Leconte de Lisle,
la sensualité et l'amour » (Bulletin d'informations proustiennes,
2008).

森本 淳生(もりもと あつお)
 1970年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。ブレーズ・パスカル=クレルモン第2大学博士。京都大学人文科学研究所助手を経て、2005年より一橋大学大学院言語社会研究科准教授。専門は19―20世紀文学。
 主要業績:『小林秀雄の論理─美と戦争』(人文書院、2002年)、『未完のヴァレリー─草稿と解説』(田上竜也と共編訳著、平凡社、2004年)、Paul
Valéry. L'Imaginaire et la genèse du sujet. De la psychologie à la
poïétique, Lettres Modernes Minard, 2009.

鈴木 雅雄(すずき まさお)
 1962年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。パリ第7大学博士課程修了。現在、早稲田大学文学部教授。専門はシュルレアリスム研究。
 主要業績:『シュルレアリスム、あるいは痙攣する複数性』(平凡社、2007年)、『ゲラシム・ルカ
ノン=オイディプスの戦略』(水声社、2009年)、『〈前衛〉とは何か?〈後衛〉とは何か?―文学史の虚構と近代性の時間』(共編著、平凡社、2010年)ほか。

松浦寿輝のカフカ論(”Eine kaiserliche Botschaft”)

2010/10/10(日)朝日新聞掲載
水野和夫(エコノミスト)書評によると、

松浦寿輝「帝国の表象」(『帝国とは何か』37-60頁)
は、カフカ『皇帝の親書』(Eine kaiserliche Botschaft)を扱っているという。

■帝国とは何か
■山内 昌之,増田 一夫,村田 雄二郎 編
■体裁=四六判・上製・カバー・278頁
■品切重版未定
■1997年2月26日
■ISBN4-00-002712-3 C0031
帝国は終わったのか,それとも姿を変えた帝国支配の始まりか-権力構造から心性まで,帝国の実相をさまざまな角度から考える.
われわれの文化と精神に痕跡を留める帝国の構造を探り,実在した帝国の勃興と衰亡に,帝国支配の現実と本質とを発見する.
現代の社会と意識の深層に横たわる「帝国」を掘り起こす,野心的論集.
■目次
作品 著者 ページ
帝国の地平 増田一夫 著 1-8
帝国の遺産 山内昌之 著 9-36
帝国の表象 松浦寿輝 著 37-60
アメリカ文学と帝国主義 柴田元幸 著 61-82
共和国の二重の身体 増田一夫 著 83-110
中国皇帝と天皇 村田雄二郎 著 111-136
遊牧のローマ帝国 本村凌二 著 137-154
多様性と開放性の帝国 鈴木董 著 155-180
帝国の幻影 石田勇治 著 181-202
帝国の残像 木畑洋一 著 203-224
民族協和の幻像 山室信一 著 225-250
帝国ふたたび 山内昌之 著 251-266

■Eine kaiserliche Botschaft
Der Kaiser - so heißt es - hat dir, dem Einzelnen, dem jämmerlichen
Untertanen, dem winzig vor der kaiserlichen Sonne in die fernste Ferne
geflüchteten Schatten, gerade dir hat der Kaiser von seinem Sterbebett
aus eine Botschaft gesendet. Den Boten hat er beim Bett niederknien
lassen und ihm die Botschaft ins Ohr geflüstert; so sehr war ihm an
ihr gelegen, daß er sich sie noch ins Ohr wiedersagen ließ. Durch
Kopfnicken hat er die Richtigkeit des Gesagten bestätigt.Und vor der
ganzen Zuschauerschaft seines Todes - alle hindernden Wände werden
niedergebrochen und auf den weit und hoch sich schwingenden
Freitreppen stehen im Ring die Großen des Reichs - vor allen diesen
hat er den Boten abgefertigt. Der Bote hat sich gleich auf den Weg
gemacht; ein kräftiger, ein unermüdlicher Mann; einmal diesen, einmal
den andern Arm vorstreckend schafft er sich Bahn durch die Menge;
findet er Widerstand, zeigt er auf die Brust, wo das Zeichen der Sonne
ist; er kommt auch leicht vorwärts, wie kein anderer. Aber die Menge
ist so groß; ihre Wohnstätten nehmen kein Ende. Öffnete sich freies
Feld, wie würde er fliegen und bald wohl hörtest du das herrliche
Schlagen seiner Fäuste an deiner Tür. Aber statt dessen, wie nutzlos
müht er sich ab; immer noch zwängt er sich durch die Gemächer des
innersten Palastes; niemals wird er sie überwinden; und gelänge ihm
dies, nichts wäre gewonnen; die Treppen hinab müßte er sich kämpfen;
und gelänge ihm dies, nichts wäre gewonnen; die Höfe wären zu
durchmessen; und nach den Höfen der zweite umschließende Palast; und
wieder Treppen und Höfe; und wieder ein Palast; und so weiter durch
Jahrtausende; und stürzte er endlich aus dem äußersten Tor - aber
niemals, niemals kann es geschehen -, liegt erst die Residenzstadt vor
ihm, die Mitte der Welt, hochgeschüttet voll ihres Bodensatzes.
Niemand dringt hier durch und gar mit der Botschaft eines Toten. - Du
aber sitzt an deinem Fenster und erträumst sie dir, wenn der Abend
kommt.

松谷みよ子さんの自宅文庫「本と人形の家」

本と人形の家 東京都練馬区東大泉6−26−6
蔵書は、約6,500冊!!
ひとり、1回に5冊借りることができます。
土曜日 13:00〜15:30 に開館
14時ごろ 紙芝居があります!!
【休館日】第4土曜日と祝日
http://matsutani-miyoko.net/index.php

〈本と人形の家〉のこと
作家 松谷 みよ子
(2005年4月発行 一般社団法人学校図書館図書整備協会会報第105号より)

 第4を除く毎週土曜日〈本と人形の家〉は開館する。33年経ったいま、屋根を葺替え、鎧戸を新しくし、絨毯を敷き替え壁も塗り直しすがすがしくなった。しかし1972年開館した当時は子どもも多く、土曜日ごとに100人近い子が詰めかけたものだが、いまは親子で30人から40人くらいだろうか。

 2時になると20年余ボランティアで文庫を支えてくれている下村澄子さんの手遊び、童うた、小さな人形を使ってのおはなしが始まる。そのあと、33年間紙芝居を演じ続けてくれている水谷章三さんが拍子木を打つと子どもたちから拍手が起る。私と水谷さんはむかし、劇団太郎座で同じ釜のめしを食った仲間で、いま彼は日本民話の会の事務局長。こうした仲間たちがあって文庫は支えられてきた。

 夏には〈本と人形の家〉で語りの勉強をしている日本民話の会の仲間による夕涼みの会が開かれる。黒幕で囲った舞台に縁台を置き、すすきを活けて昔ばなしが始まる。3つ4つの子まで集中してよく聴いてくれる。30余年、この空間で人形劇や語りを開催してきた伝統かなと思う。年々子どもたちは成長し代替りしていくのに、文庫の子たちはよく聴く。会が終ると、灯を点した盆提灯を手にした子どもたちが帰っていく。灯籠流しのように美しい。至福のときである。

 暮には人形劇が上演される。そもそも〈本と人形の家〉と名付けたのは、本があって人形劇が楽しめる家という意味だった。住宅地の中の小さな小さな劇場。

 こう記すとずいぶんいろいろイベントがあるようだが、もともと本があって猫なんかもいて、日和ぼっこするような呑気な文庫の出発だった。それはいまも変らない。ただもうひとつ、この建物は日本民話の会の語りの勉強会、外国民話の研究会、編集会議などなどの場になっている。師・坪田譲治が1960年自宅庭に〈びわの実文庫〉を創設したときも、子どもたちの文庫であると同時に、若い作家の勉強の場であり、編集会議の場であった。師が先達となって歩いた道を私もまねっこして歩いている、という思いが深い。そしてそれができたのは、多くの仲間の支えがあったればこそだった。

BURDIGALA EXPRESS(東京駅構内 グランスタ エキナカ)コーヒー美味しい!!

ブルディガラ・エクスプレス @GRANSTA
東京駅に本格欧州パンの香り。田舎パンのサンドイッチのテイクアウトや、デニッシュとコーヒーのイートインカフェも楽しめます。
「ブルディガラ」とは、ラテン語で「ボルドー」の意味。「フランスを中心とした欧州の食文化提案」を日本最大のターミナル駅東京でも実現。天然酵母を使用したパンや17種類の小麦粉と発酵時間をそれぞれに使い分けた田舎パンやパンと素材の良さを引き出した野菜・フルーツとのマリアージュが楽しめるサンドイッチ、デニッシュなどがおすすめです。

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