「その他」に分類された作品を中心に約200点を展示。市販の便器にサインを記して"芸術"とし、20世紀美術の転換点と位置づけられるマルセル・デュシャンの「泉」(1917年制作/64年再制作)と、横尾忠則の油彩画「トイレ」(2003年)を近くに配置するなど、意外な組み合わせによって見る側の解釈を広げる手法を採っている。
「その他」には、神戸市出身のやなぎみわによる「次の階を探して I」(1996年)や同市出身の澤田知子の「ID400」(98年)も含まれる。
共に写真であるが、前者は、作品世界の構築という撮影以前の段階に重点が置かれ、後者は自分自身が被写体であるなど、いずれも従来の枠組みを超えた表現であるため、「その他」に分類された。
この2作と、1050色のネイルカラーを塗ったフィルムを縦横に並べた笠原恵実子の「MANUS‐CURE」(98年)を続けて鑑賞すると、社会が女性に付したイメージや、人が「個性」と信じるものの頼りなさに思いが至る。
パリを拠点に難民救済に取り組むルーシー・オルタの「レフュージ・ウエア(避難所としての被服)」(93年)は全身を覆い、テントにもなる防護服。ポーランド出身のクシシュトフ・ヴォディチコ「もし不審なものを見かけたら…」(2005年)は、移民が米中枢同時テロ事件後に受けた差別的な扱いについてつぶやく姿を、曇りガラス越しの影で表した映像作品。
現代社会を背景とした作品が続けて登場することで、「姿を見せない」ことの多義性を考えさせられる。
収集した作品を系統立て、その位置づけを定めることは、美術館の大切な役割だ。だが本展を企画した河本信治学芸課長は「作品を一つのカテゴリー(分類)の中に落とし込む時、おびえやためらいを覚える」と話す。既存の項目にあてはめることで、そこからはみ出す微妙なニュアンスが見えにくくなると考えるためだ。
「その他」は、作品に内包された豊かな意味や物語をそぎ落とすことなく、現在そして未来の鑑賞者に開く姿勢だと感じた。
5月5日まで。月曜休館(5月3日は開館)。同館TEL075・761・4111