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2010年9月30日木曜日

『孫は祖父より1億円損をする : 世代会計が示す格差・日本』ほか、世代会計入門

世代会計
generation account


各世代別に、政府に対する支払い(税金の納付・国債の購入・年金の支払い)と政府からの受取り(補助金の受取り・国債の利払いの受取り・年金給付)をそれぞれ分類して、しかもそれをある世代に属している人が一生の間に合計でどれだけ受け取ったり支払ったりしているかを計算して、世代別の損得勘定を確定することを、世代会計という。このような作業は、近年、アメリカの有力な財政学者であるコトリコフ(L.
J. Kotlikoff)らによって提唱され、最近ではわが国を含めて主要な先進諸国で、数量的な作業が進められている。世代別のトータルな損得勘定が確定すれば、財政制度によって、どのような世代間の再分配が行われているのかが明確になる。また、世代会計はストックベースの指標であり、フローベースの指標である財政赤字よりも、ストック化した経済では財政に関するより有益な指標と考えられている。

孫は祖父より1億円損をする : 世代会計が示す格差・日本
島澤諭, 山下努著, 朝日新聞出版, 2009.4, 216p

第1章 「世代会計」で解けるさまざまな問題
第2章 「世代会計」って何だ!
第3章 「世代会計」で見る世代間格差
第4章 老人の、老人による、老人のための政治
第5章 世代間の公平性を確保するために
第6章 「世代会計」と時間、「世代会計」と政府投資


少子化の経済分析
高山憲之, 斎藤修編, 東洋経済新報社, 2006.12, xi, 271p

[目次]

* 少子化経済の課題と展望

* 第1部 少子化と雇用・賃金
国際比較からみた日本の少子化と少子化対策
少子化の経済的インパクト-理論的分析
企業における高齢者の活用-定年制と人事管理のあり方
就業に関する中高年と若年の対立とその後
少結婚化と賃金・雇用制度

* 第2部 人口減少下の財政と金融
少子高齢化と財政収支・経常収支
世代間不均衡と財政改革-世代会計アプローチによる2000年基準推計結果
子育て支援と年金改革-出生率を内生化したモデル分析
人口減少経済と金融政策
少子高齢化と家計のポートフォリオ選択

破産する未来 : 少子高齢化と米国経済
ローレンス・J・コトリコフ, スコット・バーンズ著 ; 中川治子訳, 日本経済新聞社, 2005.7, 366p

2030年、米国ではベビーブーム世代の完全引退で年金・医療費の負担が耐え切れない水準にまで上昇する!-本書が赤裸々に描き出す米国の戦慄の未来は、少子高齢化がさらに深刻な日本にこそ当てはまる。しかも、この悪夢のシナリオはすでに始まっているのだ!「世代会計」が明らかにした少子高齢化の恐るべき真実。
[目次]

* 第1章 赤ん坊から老人へ
* 第2章 真実は小説より悪い
* 第3章 ニューヨークの地図でロサンゼルスを走る
* 第4章 強壮剤、怪しげな薬、その場しのぎの応急処置
* 第5章 臨界に向かって
* 第6章 進路を変える
* 第7章 ライフ・ジャケットにしがみつけ!
* 第8章 自分の未来を救おう

16.
世代の経済学 : 誰が得をし,誰が損をするのか
ローレンス・コトリコフ著 ; 香西泰監訳, 日本経済新聞社, 1993.10, xxv, 292p

高齢化社会を支える莫大な社会保障や医療費は、誰がどう負担するのか?将来にわたる世代ごとの負担と受益の関係を明らかにすることこそ重要だ。政策指標としての「財政赤字」を批判し、新概念の必要性を大胆に説く。
[目次]

* 1章 煙と鏡-無意味な「財政赤字」という概念
* 2章 アメリカ経済の病い-真の問題は貯蓄率の低下にある
* 3章 赤字のせいだ-財政赤字は経済問題とは無関係
* 4章 数字はうそをつき、うそつきが数字を作る-財政政策の基本要素と世代会計の意義
* 5章 世代会計-世代間の負担関係を検証する
* 6章 財政赤字の錯覚-経済指標としての不適切さを検証する
* 7章 戦後の世代政策-各世代への影響と帰結
* 8章 社会保障とベビーブーム世代-世代会計から得られる教訓
* 第9章 世代会計の行方-要約

『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』

残酷な世界で生き延びる
たったひとつの方法

Only one method of survival in the cruel world

橘玲・著

TACHIBANA Akira

幻冬舎

2010年9月30日発売

定価1575円

ISBN978-4-344-01885-3

伽藍を捨ててバザールに向かえ!
恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!

「やればできる」という自己啓発では、この残酷な世界を生き延びることはできない。
いま必要なのは、「やってもできない」という不都合な真実を受け入れ、
それでも実現可能な新しい成功哲学なのだ。

自己啓発の思想は、次の4つに要約できる。

(1)能力は開発できる。
(2)わたしは変われる。
(3)他人を操れる。
(4)幸福になれる。

これらの目標に到達する技術(スキル)は存在するのか?
そしてそれは、努力によって習得可能なのか?


目次

はじめに

序章 「やってもできない」ひとのための成功哲学

ゼロ年代のカリスマ
アップルパイと縦列駐車
社会進化論を信じた大富豪
自己実現という神の宣託
一卵性双生児の再会
こころは遺伝するのか?
知能の70パーセントは遺伝で決まる
子ども成長に子育ては関係ない
「やってもできない」成功哲学

第1章 能力は向上するか?

1. 「やってもできない」には理由がある

4万年先の曜日を当てる双子
好き嫌いはなぜ生まれるのか?
電脳空間の原始人
ダメでも生きていける比較優位の理論
自由貿易は世界を幸福にする
2割の富裕層と8割の貧困層

2. 能力主義は道徳的に正しい

投資家たちのリスクゲーム
ぼくたちはみんな投資家で資本家
1億4000万円の人的資本
顔写真と生年月日のない履歴書
差別を擁護する良心的なひとたち

3. 「好きを仕事に」という残酷な世界

快適なマクドナルド化
マックジョブを選んだ高齢者
現代社会の最強の神話
バイク便ライダーの不都合な真実

第2章 自分は変えられるか?

1. わたしが変わる。世界を変える。

嫉妬のない男
"遺伝的に正しい"生き方
ヒトは肉食獣の餌だった
引き寄せの法則
親の愛情はいらない
自分を変えようとした男
無意識は考える

2 『20世紀少年』とトリックスター

草野球とビールの国のピーターパン
愛情空間と貨幣空間
権力ゲームのルール
囚人のジレンマ
しっぺ返し戦略
日本人はアメリカ人よりも個人主義?
アラブ人はユダヤ人が大好き
貨幣空間のトリックスター

3 友だちのいないスモールワールド

マクドナルドに誘われた日
貨幣空間はスモールワールド
親しい友人はなにもしてくれない
友だちのいない世界
残酷な愛情空間、冷淡な貨幣空間

第3章 他人を支配できるか?

1 LSDとカルトと複雑系

洗脳の三段階
CIAが開発した魔法の薬
幽体離脱とてんかん
脳の配線が神を生み出す
サイキックマフィア
権威と服従

2 こころを操る方法

�お返し�のちから
チンパンジーにも所有権がある
吸血コウモリと返報性の罠
影響力の武器
ハワイでタダのディナーを食べられた理由
「自分は特別」という妄想
社会的知性がマルチ商法にはまる

第4章 幸福になれるか?

1 君がなぜ不幸かは進化心理学が教えてくれる

ヤクザも魚も縄張りを守る
抗争しないという抗争
エディプスコンプレックスはでたらめ
セックス原理主義から遺伝子中心主義へ
こころというシミュレーション装置
平等も格差も遺伝子に刻印されている
ぼくたちが不幸な理由

2 ハッカーとサラリーマン

ハッカーは所有権を大事にする
やさしい独裁者
お金はゲームをだいなしにする
日本人は会社が大嫌いだった
日本的雇用が生み出す自殺社会

3 幸福のフリーエコノミー

無限の快楽をつくる技術
大富豪とマサイ族
バックパッカーのサーフィン
一期一会はぼったくりのチャンス
フリーが生んだ「評判」市場
悪人が善人になるネットオークション
悪評が自己増殖する死の世界
大富豪たちの社交パーティ
"友情化"する貨幣空間

終章 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!

雪の結晶
君にふさわしい場所

あとがき
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はじめに

 この世界が残酷だということを、ぼくは知っていた。

  この国には、大学を卒業したものの就職できず、契約やアルバイトの仕事をしながら、ネットカフェでその日暮らしをつづける多くの若者たちがいる。

  就職はしたものの、過労死寸前の激務とストレスでこころを病み、恋人や友人にも去られ、果てしのない孤独に落ち込んでいくひともいる。

  東京と高尾を結ぶ中央線はいまや自殺の名所で、リストラで職を失ったり、困窮の果てに生きる意欲をなくした中高年によってダイヤは始終混乱している。

  小学生がいじめで自ら生命を絶つかたわらで、「品格」を説く老人たちは日本国の莫大な借金に怯え、年金を払えと大合唱している。

  いまや誰もがいい知れぬ不安を抱え、グローバル資本主義や市場原理主義を非難し、迷走をつづける政治に不満を募らせている。国家は市場に対してあまりにも無力で、希望は永遠に失われたままだ。

 15年くらい前、新宿に巨大なダンボールハウスの集落があった。その頃ぼくは人生の危機を迎えていて、新宿駅で降りるたびに、西口改札前広場や、東京都庁への地下道や、新宿中央公園のホームレスを眺めて長い時間を過ごしたこともあった。

 そのうちぼくは、ほかにも同じようなひとたちがいることに気がついた。彼らはくたびれたスーツを着ていたり、工務店や運送会社の制服姿だったり、りゅうとした身なりの紳士だったりした。目を合わすことも、口をきくこともなかったけれど、ぼくたちはみな同じ空間を共有していた。その空間は、恐怖に満たされていた。

 ぼくはホームレスに興味があったわけでも、彼らのためになにかしたいと思っていたわけでもない。ただ、自分がなぜ彼らに引き寄せられるのかを知りたかっただけだ。ほんのささいなきっかけで金銭も愛情も失ってしまえば、あとは彼らの隣人として生きていくほかはない。

  それと同じ恐怖が、いまや日本じゅうを覆っている。それについてぼくがなにか語れるとしたら、その匂いを知っているからだ。

 グローバルな能力主義の時代を生き延びる方法として、自己啓発がブームになっている。ぼくはずっと、自己啓発に惹かれながらもうさんくさいと感じていて、そのことをうまく説明できなかった。能力開発によって、ほんとうにすべてのひとが救われるのだろうか。

  自己啓発の福音は、次の四つだ。

1. 能力は開発できる。
2. わたしは変われる。
3. 他人を操れる。
4. 幸福になれる。

 巷にあふれる自己啓発本では、これらの目標に到達するさまざまな技術(スキル)が解説されている。でもここでは、そうしたノウハウの優劣を評価するつもりはない。

  自己啓発は、正しいけれど間違っている。ぼくたちのこころが進化の過程でつくられてきたという新しい考え方が、この不思議を解く糸口を与えてくれる。

 といってもこれは、脳科学や進化心理学の本ではない。なぜ自己啓発がこれほどぼくたちを惹きつけ、けっきょくは裏切るのか。ぼくたちはどうしていつも不幸なのか。そして、世界はなぜこれほどまでに残酷なのか。その理由を、誰にでもわかるように説明してみたい。もちろん、専門知識はいっさい不要だ。

 自己啓発の伝道師たちは、「やればできる」とぼくたちを鼓舞する。でもこの本でぼくは、能力は開発できないと主張している。なぜなら、やってもできないから。

 人格改造のさまざまなセミナーやプログラムが宣伝されている。でも、これらはたいてい役には立たない。なぜなら、「わたし」は変えられないから。

 でも、奇跡が起きないからといって絶望することはない。ありのままの「わたし」でも成功を手にする方法(哲学)がある。

  残酷な世界を生き延びるための成功哲学は、たった2行に要約できる。

伽藍を捨ててバザールに向かえ。
恐竜の尻尾のなかに頭を探せ。

 なんのことかわからない? そのヒミツを知りたいのなら、これからぼくといっしょに進化と幸福をめぐる風変わりな旅に出発しよう。

最初に登場するのは、�自己啓発の女王�だ。

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著作一覧

1. 亜玖夢博士の経済入門 / 橘玲. -- 文藝春秋, 2010.6. -- (文春文庫)
2. 亜玖夢博士のマインドサイエンス入門 / 橘玲. -- 文藝春秋, 2010.3
3. 知的幸福の技術 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2009.10. -- (幻冬舎文庫 ; た-20-4)
4. 貧乏(ビンボー)はお金持ち / 橘玲. -- 講談社, 2009.6
5. 永遠の旅行者. 下 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2008.8. -- (幻冬舎文庫)
6. 永遠の旅行者. 上 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2008.8. -- (幻冬舎文庫)
7. 黄金の扉を開ける賢者の海外投資術. 究極の資産運用編 / 橘玲,海外投資を楽しむ会. -- ダイヤモンド社, 2008.7
8. 黄金の扉を開ける賢者の海外投資術. 至高の銀行・証券会社編 / 橘玲,海外投資を楽しむ会. -- ダイヤモンド社, 2008.7
9. 黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 / 橘玲. -- ダイヤモンド社, 2008.3
10. 亜玖夢博士の経済入門 / 橘玲. -- 文藝春秋, 2007.11
11. マネーロンダリング入門 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2006.11. -- (幻冬舎新書)
12. 臆病者のための株入門 / 橘玲. -- 文藝春秋, 2006.4. -- (文春新書)
13. 不道徳教育 / ウォルター・ブロック[他]. -- 講談社, 2006.2
14. 永遠の旅行者. 下 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2005.7
15. 永遠の旅行者. 上 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2005.7
16. 雨の降る日曜は幸福について考えよう / 橘玲. -- 幻冬舎, 2004.9
17. 「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計 / 橘玲,海外投資を楽しむ会. -- 講談社, 2004.8. -- (講談社+α文庫)
18. 得する生活 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2003.11
19. マネーロンダリング / 橘玲. -- 幻冬舎, 2003.4. -- (幻冬舎文庫)
20. 世界にひとつしかない「黄金の人生設計」 / 橘玲,海外投資を楽しむ会. -- 講談社, 2003.11. -- (講談社+α文庫)
21. お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 / 橘玲. -- 幻冬舎, 2002.12
22. マネーロンダリング / 橘玲. -- 幻冬舎, 2002.5

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