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2010年7月28日水曜日

暗がりのあかり——チェコ写真の現在展

主催:
株式会社 資生堂
会期:
2010年6月19日(土)~8月8日(日)
会場:
資生堂ギャラリー
〒104-0061
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel:03-3572-3901 Fax:03-3572-3951
平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00 毎週月曜休 入場無料
*7月19日は祝日ですが休館いたします
後援:
チェコ共和国大使館
Czech Centre Tokyo

チェコ共和国の首都プラハは、スラブ文化圏における芸術文化の中心的役割を担ってきました。1910年代末よりダイナミックな前衛芸術運動が展開され、チェコ・アヴァンギャルドがおこるなど、中欧のみならずEU、ロシア等、他地域へも多大な影響を与えています。また近年では、日本でもブックデザインや絵本、アニメーション映画をはじめとするチェコの独特な芸術文化への人気が高まっています。
本展では、その芸術文化の一翼を担う写真表現に焦点をあわせ、現代のチェコを代表する下記の10名の写真家を紹介します。
ウラジミール・ビルグス、 ヴァーツラフ・イラセック、 アントニーン・クラトフヴィール、
ミハル・マツクー、 ディタ・ペペ、 イヴァン・ピンカヴァ、 ルド・プレコップ、トノ・スタノ、
インドジヒ・シュトライト、テレザ・ヴルチュコヴァー

写真の創成期より連綿と続く伝統と歴史を継承し、新たな表現を開拓し続けてきたチェコ写真の現在を、ポートレート、風景、フォトモンタージュ、ドキュメンタリーなど多岐に渡る彼らの作品を通して紹介します。

1830年代半ばの写真登場直後より、チェコ・スロバキアにも写真技術は伝わり、当時から多くの写真家たちが活躍していました。そして1990年以降、写真が芸術表現の手法として用いられるようになるとともに、同国からフランティシェク・ドルティコル、ヨゼフ・スデック、ヤン・サウデック、ヨゼフ・コーデルカなど、多くの重要な写真家が輩出されてきました。1991年のソビエト連邦解体から自由化を経て、旧共産圏の芸術文化が一挙に世界中へ広まりましたが、チェコの写真表現もその潮流にのり、欧米をはじめとする西側諸国へと広く知れ渡ることとなりました。そして1998年から99年にかけて、バルセロナ、パリ、ローザンヌ、プラハ、ミュンヘンの5都市で「モダンビューティー:チェコ・アヴァンギャルド写真1918-1948」展が開催され、チェコの写真芸術を世界的に認知させることとなりました。また2005年には、プラハ工芸美術館とプラハ市ギャラリーの2館を会場に、「チェコ20世紀写真展」が開催されました。同展は、チェコ国内で初めて20世紀におけるチェコ写真の歴史と発展を紹介するという趣旨のもと、400人以上のチェコ・スロバキア人写真家による作品約1300点が出品され、その後2009年にドイツ・ボンの国立芸術展覧会ホールへも巡回しています。

本展は、その独特な表現と作品水準の高さで世界的に注目を集めるチェコ写真の現在を紹介する、日本初の展覧会となります。モノクローム写真を主流として独自の発展を続けてきたチェコ写真を現在最も注目を集める10名の写真家の作品約50点を通してお楽しみください。

ウラジミール・ビルグス
Vladimír Birgus
1954年 チェコ共和国フリーデク=ミーステク生まれ
都市風景や人々を題材に構成的な作品を撮る。写真家としてのほか、教育者、写真研究家としても活躍
ヴァーツラフ・イラセック
Václav Jirásek
1965年 チェコ共和国カルヴィナー生まれ
ポートレートや風景に荒廃、死といった耽美的イメージを重ね合せ、それらが引き起こす人間の反応を表現
アントニーン・クラトフヴィール
Antonín Kratochvíl
1947年 チェコ共和国ロヴォシッチェ生まれ
ポートレートとドキュメンタリー写真の領域で活躍、ドラマチックなルポルタージュで世界的名声を獲得
ミハル・マツクー
Michal Macků
1963年 チェコ共和国ブルンタール生まれ
アイデンティティの喪失と破壊をテーマに、独自の技法による"Gellage"シリーズを制作
ディタ・ペペ
Dita Pepe
1973年 チェコ共和国オストラヴァ生まれ
現代社会における多様な女性たちをテーマに、自身がその対象に扮する「Self-portraits」シリーズを制作
イヴァン・ピンカヴァ
Ivan Pinkava
1961年 チェコ共和国ナーホト生まれ
神話や古典、中世の巨匠による絵画作品からのインスピレーションをもとに聖書を題材にした作品を制作
ルド・プレコップ
Rudo Prekop
1959年 スロバキア共和国コシツェ生まれ
ステージド・フォトグラフィの領域において紙の断片や鏡の破片などを用いるなど、独創的な作品を制作
トノ・スタノ
Tono Stano
1960年 スロバキア共和国ズラテー・モラフツェ生まれ
女性の身体をモチーフに、独創的で洗練されたモノクローム写真を制作
インドジヒ・シュトライト
Jindřich Štreit
1946年 チェコ共和国フセチーン生まれ
世界的に活躍するドキュメンタリー写真家。世界各地を廻り、素朴な人間の存在と美しさをテーマに撮影
テレザ・ヴルチュコヴァー
Tereza Vlčková
1983年 チェコ共和国フセチーン生まれ
少女をモデルに、場所・時代が漠然とした、神話や寓話を思わせる神秘的なイメージの作品を制作

朝日新聞夕刊評(2010年7月28日)
『チェコの空気ムンムン「暗がりのあかり」 銀座で写真展』

グローバル化が進んでも、美術作品にはその国の空気を感じさせるものがある。東京・銀座の資生堂ギャラリーで開催中の「暗がりのあかり――チェコ写真の現在展」は、チェコの空気に満ちた展覧会だ。同国の写真表現の全体像を紹介しようと、20~60代の幅広い年代から10人を選び、49点を展示。分野別に壁に並べた。

 ドキュメンタリー写真では、インドジヒ・シュトライトが近代化で失われつつあるチェコの田舎暮らしを、アントニーン・クラトフビールが戦争や民族対立に揺れる中東欧を撮る。

 ヌード写真の分野で、トノ・スタノはポーズを取ったモデルの裸を写す。「センス」(1992年)では女性の身体が官能的な一本の曲線に。ミハル・マツクーは、写真上で自分の裸体を引き裂く。モノクロームの作品の中には、耽美(たんび)的だったり、不穏や疎外を感じさせたりするものが多い。

 テレザ・ブルチェコバーのカラー写真も不気味だ。作品には双子の少女が並んで写るが、中にはデジタルで合成した偽の双子もいるという。

 チェコの人口は日本の10分の1以下。だが、担当した資生堂の井関悠学芸員は「写真家の層は厚い。伝統と歴史を尊重した上で自分のスタイルを追求している」と話す。

 首都プラハは、スラブ文化圏の芸術の中心地の一つ。重々しくて濃密なチェコの空気を感じることができる写真展だ。(西田健作)

『デクステリティ 巧みさとその発達』

ニコライ A.ベルンシュタイン 著
工藤和俊 訳
佐々木正人 監訳

A5判並製 ● 320頁
定価4,410円(本体4,200円+税)
2003年7月15日発行
ISBN 978-4-7608-2821-0 ● C3011

紹介
運動はどのようにして環境に出会うのか。本書は,現在,生態心理学,運動研究,認知科学の最先端で,運動のアフォーダンスとして注目を集める「デクステリティ」の7論考。
一度も書かれたことのない人間の運動に関する本

目次

 日本語版への序文   マイケル・ターヴェイ

 著者まえがき

第�章 巧みさ(デクステリティ)とは何か
  科学戦隊の偵察と戦闘
  心理物理学的能力
  巧みさ(デクステリティ)——勝利者
  巧みさ(デクステリティ)の値打ちが高いわか
  巧みさ(デクステリティ)とは何か
第�章 運動制御について
  人間の運動器官における動きの多様性
  舌と眼の動きについて
  運動制御はなぜ難しいか
  自由度二および三とは何か?
  冗長な自由度をどのように克服するか
  筋の弾性による問題
  運動の協応とは何か?
  筋 ‐ 間接感覚とその補助
第�章 動作の起源について
  大いなる生物の競争
  尺度と配役
  生命と興奮性の出現
  神経系の創成
  体の口側は、いかにして頭側になったか
  防御? それとも攻撃?
  横紋筋を使いこなす
  横紋筋の弱点
  袋小路の節足動物
  脊椎動物の進化
  感覚による調整
  体肢の発達
  豊かになる動作
  爬虫類王国の全盛
  覇権争い
  鳥類が到達した運動
  錘体路系はいかにして錘体外路系を呑み込んだか
第�章 動作の構築について
  ゼウスと人間についての神話
  脳の摩天楼
  生理的早産の赤ん坊
  新しい課題と脳の発達
  豊かになる感覚的印象
  動作のリストと背景レベル
  脊髄の引き金機構
第�章 動作機構のレベル
  緊張(トーン)のレベル——レベルA
  筋 ‐ 関節リンクのレベル——レベルB
    レベルBの構造
    レベルBの機能
  空間のレベル——レベルC
    レベルCの構造
    空間場とは何か?
    レベルCに属する運動の特性
    空間レベルの動作
  行為のレベル——レベルD
    行為とは何か
    主な特徴
    調整と自動化
  巧みさの種類について
  行為のタイプ
  子供の運動形成
第�章 練習と運動スキル
  運動スキルについての誤った考え
  練習可能性はどのようにして発現するか
  運動スキルとは何か
  運動スキルの構築
    先導レベルと運動の構成
    調整の同定と分配
    背景調整の割りあて
    動作の自動化
    背景調整の調和を奏でる
    標準化
    安定化
第�章 巧みさ(デクステリティ)とその特徴
  巧みさ(デクステリティ)についてすでに分かっていること
  どこでどのように巧みさ(デクステリティ)は現れるのか
  巧みさ(デクステリティ)には何ができるのか
  巧みさ(デクステリティ)の仕事ぶり
  巧みさ(デクステリティ)の核心
  巧みさ(デクステリティ)の先見性
  巧みさ(デクステリティ)と美しさ
  巧みさ(デクステリティ)はどのように発達するか


 著者あとがき
 主要語句解説   工藤和俊
 [解題]運動はどのようにして環境に出会うのか
      —ベルンシュタインの三つの発見  佐々木正人
 訳者あとがき   工藤和俊
 人名索引
 事項索引


著者について
「本書が書かれたのは、約半世紀前。ソビエト社会主義共和国連邦をスターリンが統治していた時代だ」(訳者あとがき)

ベルンシュタインが一般向けの科学書としての本書を執筆していたころ、ベルンシュタインは気鋭の生理学者だった。1947年には『動作の構築について』という本を出版し、「動作障害の治療に携わる外科医たち」から高い評価を得たことで、スターリン賞という国家的な賞を受けた。
ところが、ベルンシュタインがパブロフの条件反射説を批判したこと、ソ連国内に反ユダヤ主義の風潮広がっていたことが重なり、ユダヤ人であったベルンシュタインは「パブロフを貶める非国民的研究者として共産党の機関誌「プラウダ」誌上で公然と批判される」ようになってしまう。
ベルンシュタインは、職を失い、出版は取りやめになってしまった。
歳月が流れ、忘れられた原稿がとうとう発見されたとき、ベルンシュタインが亡くなってから20年が過ぎていた。
ゴルバチョフ政権下、ベルンシュタインの業績は再評価され、1991年には本書(原書)が出版され、1996年には英訳版が出版された。この日本語版は英語版がベースになっている。

神谷美恵子『生きがいについて』を批判する本『「隔離」という病い 近代日本の医療空間』

タイトル : 「隔離」という病い 近代日本の医療空間
著/武田徹
発行/中央公論新社
中公文庫

解説
 恐怖の宣伝、強制収容、終身隔離……「病んだ」共同体はいったいどこへ向かうのか。ハンセン病を軸に日本社会の「病い」観を問いなおす。
神谷美恵子『生きがいについて』を批判。

目次
序章 終わりからはじめること


第一章 近代国家であるために
 1 一等国の鏡像
 2 文明国という盛装


第二章 隔離という病いをめぐって
 1 ほどけぬ封印
 2 見えない病棟


第三章 「奇妙な国」の論理
 1 人工共同体
 2 生活者の場所


第四章 「牧人」の系譜学
 1 楽天地と家族主義
 2 『小島の春』
 3 フーコーの図式


第五章 生きがい論の陥穽
 1 「死と再生」のドラマ
 2 ハンセン病文学
 3 「かい」と「生きがい」のあいだに
 4 目的論の暴力


第六章 ユートピアの枠
 1 O‐157、一九九六
 2 最小国家
 3 冷たい義理


終章 そして、都市へ


あとがき
その後のこと──文庫版刊行に際して
参考文献

著者
 武田 徹(たけだ とおる)
 1958年、東京生まれ。 国際基督教大学人文科学科卒。同大学院比較文化研究科博士課程修了。評論家・ジャーナリスト・メディア社会論研究。著作多数。

『ヴィジュアル・リーディング 西洋中世におけるテクストとパラテクスト VISUAL READING: Text and Paratext in the Middle Ages』

松田隆美:著
発行:ありな書房
A5判 256ページ 上製
定価:4,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7566-1014-0 C0070
奥付の初版発行年月:2010年07月 書店発売日:2010年07月14日

■紹介

テクストとイメージが織りなすアートフルな宇宙が広がる、中世ヨーロッパの彩色写本。各種挿絵入り本を対象に、挿絵を中心としたパラテクストの機能をテクストとの関連において分析し、中世後期の読書文化を考察する。

西洋中世の書物の大半は絵入りである。特に、写本から印刷本への移行期に当たる15−16世紀には、写本、印刷本を問わず多くの挿絵入り本が制作されて広範な読書層を獲得した。工房生産の時祷書写本、木版画による挿絵を多用して印刷された時祷書、「羊飼いの暦」として知られる実用的教訓書などはその代表例である。これらの書物は、挿絵とテクストとのあいだにダイナミックな相関性を作り上げ、読者層の実用的だが限定的なリテラシーを想定して、読者に書物を視覚的に読むことをうながしている。

■目次
序章 中世写本のイメージとテクスト
1 教会によるイメージの擁護
2 中世写本の挿絵の類型
3 コンピラティオとミセラニー性
4 西洋中世の書物生産と流通
第一章 時祷書のテクストとパラテクスト
1 書物としての時祷書
2 時祷書の利用の実際
3 時祷書の基本的構成
4 時祷書の制作と書籍工房
5 活版印刷による時祷書
6 時祷書の用途の多様化
第二章 時祷書の変容−典礼書から教訓書へ
1 周縁部のイメージ
2 予型論の物語絵シリーズ
3 暦の中世的宇宙
4 「人生における諸時期」
5 時祷書の暦と「人生の十二時期」
第三章 「羊飼いの暦」と中世的宇宙
1 羊飼いの知恵と心身の「健康」
2 「羊飼いの暦」と時祷書
第四章 「専門の読み手」とミセラニー写本
1 アマチュア絵師の仕事
2 北イングランドの宗教文学ミセラニー写本
3 解釈のユニットとしてのコンピラティオ
終章 中世の書物のポピュラリティ

あとがき
主要参考文献
索引

■著者
松田隆美(マツダタカミ)
慶応大学文学部教授 イギリス・ルネサンス文学 書物文化史

上記内容は本書刊行時のものです。

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