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2010年6月10日木曜日

ゲーテ ボヘミアの森

74歳のゲーテが19歳の女性にフラれて、馬車の中で「マリーエンバートの悲歌」を書いた。

「『マリーエンバートの悲歌』と訳されるからおごそかだが、マリーエンは『マリアの』といった意味だ。聖母マリアである。バートは温泉、『悲歌』の原語『エレギーエン』はエレジーのドイツ語。観音温泉エレジー、つまりは『湯の町エレジー』である。
 ついでながら温泉町マリーエンバートの恋は一八二三年のことである。ナポレオンの没落のあと帝国全土にわたり、宰相メッテルニヒによる監視体制がととのっていた。湯治町にはワケありな人物が出入りするので、とりわけ監視の目が厳しい。老ゲーテの恋愛のことも、当局に報告が届いていた。当局の指示は『特に調査の要なし』。老人が小娘にいいよってフラれたという、笑うべき一件として処理されたらしいのだ。」
池内紀『ゲーテさん こんばんは』

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