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2010年8月26日木曜日

最高裁判事として「一票の格差違憲」判断を書き続けた福田博さんの著作『世襲政治家がなぜ生まれるのか? : 元最高裁判事は考える』

288ページ
価格 : 1,680円(税込み)
ISBN : 978-4-8222-4731-7
発行元 : 日経BP社
発行日 : 2009/03/23

■内容紹介

「1票の格差」違憲訴訟で少数意見を書き続けた元最高裁判事によるニッポン民主主義批判。

アメリカで黒人初のオバマ大統領が誕生したのは、建国以来、人種、性別、住所などによる投票価値の不平等を、訴訟と裁判所による判決の積み重ねによって是正してきたからである。三権分立がしっかり機能している一流の民主主義国の証明だ。
一方、日本はといえば、そもそも住所によって票の平等が大きく損なわれている状態が長く続いている。違憲訴訟は、すべて憲法判断を独占する最高裁によって退けられてきた。そこに、著者は最高裁の「不作為」の罪を見る。

たとえば2007年の参議院選挙では、選挙区選挙の最低得票当選者は高知選挙区の16万6000票。他の選挙区でそれより多く得票しながら落選した人は44人。その得票合計は1372万票に上る。2005年衆院選挙では、小選挙区選挙の最小得票での当選者は福井1区の5万1000票。それより多くの得票を得ながら他の選挙区から出て落選した人は294人。その得票総数は2560万票。実際に投票にいく有権者の約2割の投票は「カウントされない仕組み」になっている、と著者は訴える。

世界の民主主義国で例を見ない世襲政治家の多さは、すべて「1票の格差」を放置している「不作為」から生まれている。10年間、最高裁判事として多数説の合憲論に抗して、少数派として違憲判断を書き続けた著者の執念の記録。

■目次

はじめに

第一章 講演 一票の格差と日本の将来
はじめに
「投票価値の不平等」と「一票の格差」の相違
不平等な投票価値の制度とゲリマンダリングの相違
米国建国の際の妥協とその及ぼした影響
わが国において投票価値の不平等が当初から存在し、今日まで続いている理由
現在、わが国の国会において生じている状況
 —国民を平等に代表しない機関への変貌、二世、三世議員の急増など—
具体的に生じている問題の例示
民主主義体制が的確に機能する条件とその体制の利点
民主主義国家が民主主義国家でなくなるとき
わが国の将来を待つもの

第二章 講演のあと、さらに考えたこと
民主主義の優位への疑問
不平等選挙に「免罪符」を与える最高裁
先祖返りする日本の政治

付属資料
■平成八年九月一一日最高裁判所大法廷判決【選挙無効請求事件(いわゆる定数訴訟)】
 多数意見の要旨
 共同反対意見(裁判官大野正男、同高橋久子、同尾崎行信、同河合伸一、同遠藤光男、同福田博)
 裁判官尾崎行信の追加反対意見
 裁判官遠藤光男の追加反対意見
 裁判官福田博の追加反対意見

■平成一〇年九月二日最高裁判所大法廷判決【選挙無効請求事件(いわゆる定数訴訟】
 多数意見の要旨
 共同反対意見(裁判官尾崎行信、同河合伸一、同遠藤光男、同福田博、同元原利文)
 裁判官尾崎行信、同福田博の追加反対意見
 裁判官遠藤光男の追加反対意見

■平成一一年一一月一〇日最高裁判所大法廷判決【選挙無効事件(いわゆる定数訴訟)】
 多数意見の要旨
 共同反対意見(裁判官河合伸一、同遠藤光男、同元原利文、同梶谷玄)
 裁判官福田博の反対意見

■平成一二年九月六日最高裁判所大法廷判決【選挙無効事件(いわゆる定数訴訟)】
 多数意見の要旨
 共同反対意見(裁判官河合伸一、同遠藤光男、同福田博、同元原利文、同梶谷玄)
 裁判官遠藤光男の追加反対意見
 裁判官福田博の追加反対意見
 裁判官梶谷玄の追加反対意見

■平成一六年一月一四日最高裁判所大法廷判決【選挙無効事件(いわゆる定数訴訟)】
 多数意見の要旨
 共同反対意見(裁判官福田博、同梶谷玄、同深澤武久、同濱田邦夫、同滝井繁男、同泉徳治)
 裁判官福田博の追加反対意見
 裁判官梶谷玄の追加反対意見
 裁判官深澤武久の追加反対意見
 裁判官濱田邦夫の追加反対意見
 裁判官滝井繁男の追加反対意見
 裁判官泉徳治の追加反対意見

■平成一七年九月一四日最高裁判所大法廷判決【在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件】
 多数意見の要旨
 裁判官福田博の補足意見

あとがき

■著者

学歴
1959年 東京大学法学部第二類卒業
1960年 東京大学法学部第一類卒業
1962年 イェール大学ロースクール卒業(LL.M.)
1996年 カールトン大学名誉法学博士

経歴
1960年-1995年 外務省
1975年-1976年 外務省経済局 国際機関第二課長
1976年-1978年 外務省アメリカ局 北米第二課長
1978年-1980年 同省同局 北米第一課長
1980年-1983年 在アメリカ合衆国日本国大使館 参事官
1983年-1985年 大臣官房 人事課長
1985年-1986年 大臣官房 審議官(アジア局)
1986年-1987年 内閣総理大臣 秘書官
1989年-1990年 外務省 条約局長
1990年-1993年 特命全権大使としてマレーシア駐在
1993年-1995年 外務審議官
1995年-2005年 最高裁判所 判事
2006年- 株式会社ミレアホールディングス 監査役
2008年- 財団法人日本法律家協会 国際交流委員長
2009年- 財団法人日本法律家協会 常任理事

「不平等選挙権是正のための訴訟を-日本を真の民主主義国にするために-」
『中央公論 Central Review』2006年4月号 p.320〜331
第百二十一年第四号
ISSN 0529-6838
定価800円(本体762円)
http://www.chuko.co.jp/chuokoron/back/200604.html

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