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2010年10月5日火曜日

『つながり  社会的ネットワークの驚くべき力』

つながり
社会的ネットワークの驚くべき力
著者: ニコラス・A・クリスタキス
著者: ジェイムズ・H・ファウラー
翻訳者: 鬼澤忍
発行年月日:2010/07/21
サイズ:四六判
ページ数:408
ISBN:978-4-06-214770-5
定価(税込):3,150円
出版社: 講談社

■内容紹介
肥満も性感染症も笑いもすべて伝染す(うつ)る!?
ハーヴァード大学医学部・教養学部教授とカリフォルニア大学の政治学者が提示する、クラウド時代の社会的ネットワークの姿!
デジタルであれアナログであれ、人と人とのつながりのなかでしか人間は生きていかれないのだ……
人と人との"つながり"が社会を動かしている!
2007 年、肥満は伝染するという私たちの研究結果が発表されると、大反響が巻き起こった。数百通ものeメールを受け取ったし、この研究をめぐるブログへの書き込みも数百にのぼった。……だが現在では、肥満は伝染することがわかっている。私たちの研究が発表されて以降、私たちのほかに3つの研究チームが別々の集団で肥満の伝染を確認しているのだ。……では、肥満はいかにして伝染するのだろうか。

■ 目次

私たちはみんなつながっている

第1章 真っ只中で
バケツリレーと電話連絡網
ネットワークにおける生活のルール
ルール1 私たちはネットワークを形づくる
ルール2 ネットワークは私たちを形づくる
ルール3 友人は私たちに影響を及ぼす
ルール4 友人の友人の友人が私たちに影響を及ぼす
ルール5 ネットワークはそれ自身の命を持っている
六次の隔たりと三次の影響
私たちはつながっている

第2章 あなたが笑えば世界も笑う
私たちの祖先は感情を持っていた
感情の伝染
感情の集団暴走
……幸福の広がりとは
……人混みのなかで独りぼっち
……

第3章 ともにいる者を愛す
私はどうやってパートナーと出会ったか
似た者同士
……花婿が花嫁より得な理由
愛、セックス、多層性

第4章 あなたも痛いが私も痛い
元恋人の恋人の元恋人
病原菌も広がってゆく
異なるネットワーク、異なる処方箋
友人の友人があなたを太らせる
……自殺も伝染するのか?
公衆衛生の新たな基礎

第5章 お金の行方
ジョージはどこに?
SARS、シーガル、水夫
……情報の流れの三次の隔たり弱い絆の強み
いつの時代も仲間同士の結束は固い
ネットワークの創造性
……

第6章 政治的につながって
あなたの一票に価値はない
一人だけで投票するわけではない
……つながりの最も多い政治家は誰だ?
政治的影響のネットワーク構造
活動はインターネットへ

第7章 人間が持って生まれたもの
太古から結ばれた絆
協力関係につながりが果たす驚くべき役割
……双子に学ぶ
ネットワークは遺伝子のなかにもある
……友人を何人持てるか?
……

第8章 おびただしいつながり
仮想世界の現実的行動
……まあ、すてきなアバターですね
……シックスディグリーズからフェイスブックへ
大量に、そして受動的に
友人が多すぎる?
リアリティーとウィキアリティー
干し草の山から針を探し出す
……

第9章 全体は偉大なり
人間の超個体
あなたのものでもないし、私のものでもない
善意の広がり
持てる者と持たざる者——社会的ネットワーク格差
……

■著者インタビュー
「あなたの幸福の要因の一つは友人の幸福であるということだ。単に友人の幸福ではなく、友人の友人の幸福が影響していると言っているだけだ。」
「ネットワークが自分にどれくらいためになるかばかりを考えるのではなく、あなた自身がいかにネットワークのためになるかを考えるのが一番良いのだ。」

——著書のテーマである「ソーシャル(社会的)ネットワーク」とは何か、分かりやすく説明してほしい。

 こう考えると分かりやすいだろう。一人の男性の妻には友人がいて、その友人には夫がいて、その夫には同僚がいて、さらにその同僚には兄弟がいて、兄弟には友人がいる。人びとはそうした広大な社会的ネットワークでつながっている。

 ここで大事なことは、社会的影響は知っている人のところで止まるわけではないということだ。あなたが友人に影響を与え、その友人がさらに友人にその影響を"伝染"したとすれば、われわれは人生で一度も会ったことのない人たちに影響を与えていることになる。

 今回、ジェイムズ(『つながり』共著者のジェイムズ・ファウラー
カリフォルニア大学サンディエゴ校政治学科教授)と書いたことはまさにそうした社会的ネットワークが持つ驚くべき力についてだ。

——どのような発見があったか。

 実は、この分野の研究は100年以上前から行われており、人が他人に影響されることは分かっている。ただ過去の研究対象は数人単位から多くとも数十人単位の社会的ネットワークにとどまっていた。一方、今回われわれが興味を抱いたのは、数千人、数万人、数百万人単位の社会的ネットワークだ。規模からして、新しい発見だらけだったと言える。

 特に驚かされたのは、特定の種類の音楽が好きといった好みだけではなく、広大な社会的ネットワークを通じて人が直接付き合いのない他人から体重や感情まで影響を受けることだった。友人の友人の友人の体重が増えると、その人の体重も増える——、友人の友人の友人がタバコをやめると、その人もいつのまにか禁煙している——といったことが実際に確認できた。投票活動でも、ある人の投票が友人の友人の投票に影響を受けているケースもあった。

社会的ネットワークは、知れば知るほど、複数の個体から形成されていながら、1つの個体であるかのように存在し機能する"超個体"だったのだ。感情、肥満、幸福、不幸、怒り、笑いといったさまざま事象がそのネットワークの中を伝播する。

 友人はある程度選べるが、その友人の友人は自分で選べないことを考えると、興味深い結果ではないか。

——どうやって定量的に分析したのか。

 それはもう大変だった(笑)。社会的ネットワークの力を研究するためには、社会的ネットワークの大量の実例が必要だったが、それは自分たちでかき集めるしかなかった。

 前述した友人のネットワークもあれば、大家族のネットワークもあるし、同僚のネットワークもある。またそれらをすべて含むネットワークもある。線でつなぎ絵に描こうとすれば、それらはさまざまな方向に枝分かれして複雑に入り組んだかたちになる。

 さらに、社会的ネットワークの力を分析するには、ある事象の影響が時間の経過とともにネットワーク内にどのように波及していったのか、ネットワークに属する個々人に関する具体的な情報も必要だった。分かりやすく言えば、社会的ネットワークのスナップショットではなく、映画が必要だったのだ。さもなければ、友人の友人の友人が太ると、自分が太るといったデータは検証できない。

 ちなみに、研究費はNIH(National Institutes of Health、国立衛生研究所)の一つであるNIA(National
Institute on Aging、国立老化研究所)からもらった。5年間で100万ドルほど使ってデータをかき集めた。そして、さまざまな分野の分析手法を用いて、社会的影響の伝染の経緯を研究した。

——社会的ネットワーク内を流れる事象に、肥満や幸福を選んだ理由は?

 肥満、喫煙、飲酒は公衆衛生上の重要性から選んだ。たとえば、日本人が特にそうだが、飲酒は非常に社会的な行為であり、ある人が飲むかどうか、またその人が実際にどれくらい飲むかどうかは周囲の人に強く影響される。

イギリスでは今binge drinking(飲み騒ぐこと、一気飲み)が深刻な社会問題になっている。大人数のグループになると飲みすぎる。ただ、われわれが関心を持ったのは、同じ場所にいる人が飲むのを見て影響を受け、自分が飲むということではなく、その場で一緒に飲んでいない友人の友人の友人の飲み具合によって、自分がどれくらい影響を受けるかということだ。そして、われわれは影響を確認できた。

 さらに、離婚、幸福、寂しさ、憂鬱、利他主義、睡眠行動、薬物使用などについてもデータを収集した。

——幸福は、不幸よりも伝染しやすい?

 ジェームスと私はいろいろな賭けをしたが、これだけはジェームスが勝った。研究を始める前までは、私は不幸が幸福よりも速く伝染すると思っていた。というのも、人間が他人とのつながりを求めるのは、より効率的に世界と向き合うためであり、悪いニュースの広がりは、その"進化的な適応"という目的に適っていると想定していたからだ。だが結局、私は間違っていた。

——何を見落としていたのか。

 マイナスの感情の大きな目的が、情報を伝達することであるのに対して、プラスの感情のそれはグループの団結機能にあるということだ。たとえば、私はトラをみると恐怖を感じる。あなたはトラを見ていなくても、私を見て、真似をする。それは、集団生活の円滑化に一役買うが、グループのつながりを強めるものではない。一方、幸福や愛というのは、グループを団結させる感情なのだ。

 ちなみに、恐怖や不幸、怒り、あるいは幸福を感じたりすることは、人間が他の動物に対して持つ進化上のアドバンテージだ。人間は単に感情を顔に出すだけではなく、その表情を読み取り、真似をすることができる。私がある感情の状態になると、あなたはそれを受け入れる。すなわち、われわれは感情を個体の心理状態ではなく、社会学的な実体として理解すべきなのだ。前述したとおり、感情は個々の存在ではなく、集団的な存在でもあるということだ。

——ある社会的ネットワークの中心にいる人が非常に幸福だとすると、周囲の人も幸福を感じるということか。

 決定力があるものではない。あなたの幸福の唯一の要因が、あなたの友人の幸福だと言っているのではない。それは間違いだ。われわれが言っているのは、あなたの幸福の要因の一つは友人の幸福であるということだ。単に友人の幸福ではなく、友人の友人の幸福が影響していると言っているだけだ。

 今ここで話しているネットワークは、フェイスブックのようなデジタルネットワークではなく、実際のネットワークだ。人類が何十万年も作ってきたネットワークだ。オンラインネットワークにはオフライン(実社会)のネットワークと共通する部分もあるが、異なる部分もある。

——どんな違いがあるのか?

 4つの大きな違いがある。一つ目はenormity(影響力の大きさ)だ。これはソーシャルインタラクション(社会的相互作用)の大きさを指す。あなたが属す社会的ネットワークの大きさは、オンライン上では何千人にもなる可能性がある。

 二つ目はcommunality(共有性)で、これは他人と協力する能力だ。オンラインの世界は、オフラインの世界に比べて、基本的に共有性を実現しやすい。たとえば、ウィキペディアは、現実の世界では組織立てるのが非常に難しい方法で、多くの人の貢献を引き出している。

 三つ目のspecificity(特異性)は個人を探し、見つけ出す能力だ。たとえば、日本の小さな漁村に住んでいれば、特定の資質や能力を持つ人を探すことは非常に難しいだろう。口コミに頼らなければならない。しかし、今もし沖縄で陶器の作り手を見つけたければ、ネットを使って数分で見つけることができる。300年前であれば、これは非常に難しいことだった。

 四つ目はvirtuality(バーチュアル性)で、オンラインでは、現実の世界では非常に実行するのが難しいアイデンティティを持つことが可能だ。たとえば、男性が女性のアバター(仮想空間における自分の分身)を持つこともできる。

——つまり、オンラインのほうが影響を広げる力は強いのではないか。

 こう答えよう。われわれが発見したことは、オンラインでつながっているからといって、人は誰からも影響を受けるわけではないということだ。それは同じ町に住む人なら影響を受けるかというとそうでないのと同じだ。フェイスブックの友達が何千人いたとしても、彼らの行動とか好みに影響を受けるかと言ったら別の話だろう。

 しかし、その中でもオンライン上の友人で現実の友人でもある人、オンライン上の友人であったが、現実の友人になった人は、実際にあなたに影響を与える傾向がある。

 本の中で「自殺」を取り上げているが、日本では他人同士が集まって集団自殺してしまうことがあると聞く。この現象はspecificity(特異性)を示している。

 自殺したいとき、自殺したいと思っている他の人を探そうとする。それはまた悲しいことにcommunalityも示している。集まると、悪い行動が強化される。こういう人たちは他人同士であることがときどきある。また、ときには集まってからお互いのことを知るようになって、そういう行動が強化される場合もある。こういう場合、オンラインの友人が現実の友人になる。もちろんこれは日本だけの問題ではない。アメリカにも自殺クラブはある。

——(自殺のような)マイナスの感情のほうがプラスの感情よりも伝播力がやはり強いということではないか。

 オフラインの現実社会のネットワークの場合は違う。愛や利他主義や幸福などの好ましい特性の方が、不幸や暴力、虚報よりもはるかに広がるのが速い。つまり、つながりのある生活は損害よりも恩恵のほうを多くもたらしてくれるのだ。

——日本は"つながり"が希薄だから、孤独死が増えている?

 それは、日本だけの問題ではない。

 正確な比率は覚えていないが、イギリスにはクリスマスを一人で過ごす人が100〜200万人いるという研究結果がある。本の中にも書いたが、アメリカ人の5%は、友人がいない。この孤立の問題はフランス、イギリス、アメリカ、日本などあちこちにある。国によってかたちは異なるが、一般的な問題だ。この社会上の孤立は死のリスクになる。孤立すると、死期が早まる。

——では、われわれは社会的ネットワークをどう人生に活かしていけばいいのか。それはある程度コントロールできるようなものなのか。

 社会的ネットワークの中での自分のポジショニングについては自助努力でかなりコントロールできるが、それ以外の部分では部分的なコントロールしかできないことをまず自覚すべきだ。

 もちろん、あなたの友人が犯罪人であれば、彼との関係を切ることは恐らくいいアイデアだろう。しかし、前述したように、人とのつながりを持つことは、基本的に損害よりも恩恵のほうをより多くもたらしてくれることが分かっている。意図的に自分の社会的ネットワークを作っていくことはあまりうまくいかないだろう。

 また、禁煙するとか、減量するとか、少しでも幸せになろうとするとか、自分自身の人生にプラスの変化をあなたがすれば、それは自分の友人だけではなく、その友人の友人にまで影響を与えるという視点も大切だ。何十人というレベルではなく、何千人、何万人というレベルにまで影響を与える可能性があるということだ。

 かつてジョン・F・ケネディは"Ask not what your country can do for you; ask what you
can do for your country."と言った。同じことは社会的ネットワークにも言える。

 つまり、ネットワークが自分にどれくらいためになるかばかりを考えるのではなく、あなた自身がいかにネットワークのためになるかを考えるのが一番良いのだ。

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