ジョージ・オーウェル日記
税込価格 : 8820円 (本体価格8400円)
ISBN : 978-4-560-08092-4
作家の全貌を知る貴重な資料
ジャンル : 文学
体裁 : A5判 上製 612頁
刊行年月 : 2010-09
内容 : 没後60年記念出版。大不況下の炭鉱労働、最底辺の都市生活者、モロッコのマラケシュ滞在、第二次大戦下のロンドン空襲、孤島での農耕生活と自然観察など、作家の全貌を知る貴重な資料。
「薄汚い格好の女がいた。女は家の前の溝の脇に跪き、詰まっている鉛の配水管を棒でつついていた。身を切るような寒さの中で、ウィガンのスラムの溝の脇に跪き、詰まった配水管を棒でつついているのは、なんと恐ろしい運命だろうと思った。その時、女が顔を上げ、私の目を捉えた。その表情は、見たこともないほどわびしかった。女は私とまさに同じことを考えているのだと強く感じた」[『ウィガン波止場への道』日記より]
■没後60年記念出版
英国の作家ジョージ・オーウェルは、全体主義を厳しく批判した小説『動物農場』や『一九八四年』、スペイン市民戦争の証言となったルポ『カタロニア賛歌』などで世界的に知られる、二十世紀を代表する巨匠だ。一九五〇年に没してから、今年で六十年になる。本書は、英国で刊行された、詳細な注を施した全集(二十巻)のうち、一九三一年から四九年までの、現存する十一冊の日記と二冊の手帖を一冊にまとめた、たいへん貴重な一次資料だ。
ロンドンの最底辺生活者と行動を共にし、ホップ摘み労働を体験した「ホップ摘み日記」、大不況下の炭鉱地帯に入り、労働者の過酷な労働と生活に共感をこめて活写した「『ウィガン波止場への道』日記」、海外滞在記である「モロッコ日記」と「マラケシュ・ノート」、第二次大戦が勃発し、BBCで宣伝番組の制作に従事し、空襲に見舞われる様子や愛国心を綴った「戦時日記」、戦後、結核に罹り、孤島の農場に引きこもって、農耕、釣り、自然観察を記録した「家事日記」など、作家の全貌を知ることができる。オーウェルは伝記が書かれることを嫌っていたというが、この日記が彼の人生を物語る実質的な「自伝」になっていることは、興味深い。
■編者:ピーター・デイヴィソン Peter Davison
1926 年、英国北部に生まれ、7歳の時に父を亡くし、女優志望の母がロンドンに行ったため、孤児院で教育を受けた。16歳になる前に社会に出て、映画会社に勤めたのち、海軍に入った。除隊後、鉄道雑誌編集者などを経て、夜学と通信講座で学士号、修士号を取得し、シドニー大学講師になった。その間に現代演劇をテーマにした博士論文を書き、バーミンガム大学、ケント大学などでも教鞭を執り、現在はグリンダー大学名誉教授。これまでにオーウェルに関する著作を30冊近く執筆し、編集している。そのなかでも、詳細な注を施した『ジョージ・オーウェル全集』(全20巻)は、作家の今日的意義を高めたとして、評価されている。1999年、文学に対する貢献によって大英帝国四等勲士に叙せられ、2003年、文献学会から金賞を授与された。
■訳者:高儀進(たかぎ すすむ)
1935 年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。翻訳家。日本文藝家協会会員。主要訳書:D・ロッジ『大英博物館が倒れる』『交換教授』『どこまで行けるか』『小さな世界』『楽園ニュース』『恋愛療法』『胸にこたえる真実』『考える…』『作者を出せ!』『ベイツ教授の受難』、R・ムーアハウス『ヒトラー暗殺』、D・C・ラージ『ベルリン・オリンピック
1936』、B・マッキンタイアー『ナチが愛した二重スパイ』
*データは刊行時のものです