手わざ、そしてデジタル・デザイン
鈴木 一誌 著
200210刊/四六判/390頁
C1070 定価2940 円(本体2800 円)
ISBN4-7917-6000-X
ページを生み、書物を生み出す力が世界を動かす。
デジタル時代を迎えたデザインは、「情報を公開する技術」としての性格を強め、そこに出現した文字は、言葉とのズレと不安にふるえている。グラフィック・デザイン界きっての論客が、デザインの基本と実践を詳細に分析、「ページネーション」「フォーマット」というキーワードを、文字とテクスト、文学・芸術と〈作者〉、さらには現代文化・社会そのものを見直すための概念へと鍛え上げる。
本書はタイポグラフィに関する素材が豊富に解説されその真髄を追及しているが,単なるグラフィックアーツ関連のハウツウ本でもないところに意義がある。タイポグラフィに関して,広角な視点から分析および解析をしている。
ページネーションとは,本来「丁付け」という意味に使われ,その後「ページを構成する文字・図形・画像を一括してレイアウトすること」という意味として捉えられていた。しかし本書では,「一つずつの活字を拾うことで行になり,行が集まってページとなる。ページネーションとは,本の1ページを生み出していく行為でありつつ,同時にページ相互の連続性を誕生させていくことだ」と述べている。
【目次】
まえがき ページを生み出す力
1 文字
タイポグラフィとはなにか
文字の不安
滲む文字
うさぎという漢字
文字は実在するか
グリフという運動
ひとつの意味、ひとつのかたち
文字コード問題とはなにか
包摂は編集である
東大明朝を解説する
テクストは文字の集合か 東大明朝「六万四千漢字」を批評する
書くことの孤独から 石川九楊「文学は書字の運動である」をめぐって
書体の向こうの鈴木勉
2 デジタル化されるデザイン
集合名詞としての作者
デザインとことば
日本語の特質とデザイン
印刷という定点
印刷する権利
刷り出し立ち合い
印刷工場で
校正と本機のちがい
完全な見当はない
一色がむずかしい
特色という概念
インキを盛る
印刷会社のこれから
手の記憶
段ボール印刷という文化
3 ページネーション
ページネーションは生命の活動である
ページネーションとは
『シカゴ・マニュアル』との出会い
マニュアルの世紀の「究極の一冊」
ランニング・ヘッド
DTPとマニュアル
ちがいの証言
「ページネーション・マニュアル」の提起
行を演出する
4 フォーマット
版面の内と外
フォーマットの誕生
しごとの角度
三〇分の一
次郎長三国志
技術をもち運ぶ
専門家を定義する
「しごと大好き」が前提か
余白は孤独ではない
衝突する場としてのページ
5 法とデザイン
知恵蔵裁判とはなにか
知恵蔵裁判を語る
本文がない
見える/見えない 「知恵蔵裁判」と『知恵蔵裁判全記録』
6 テクストから書物へ
その場から身をひき剥がす
書物の敷居学 ジェラール・ジュネット 『スイユ テクストから書物へ』
デザインという空間
流動する平面
見たいものだけを
輪郭偏重の世界観
時間とデザイン
ステップを刻む
原稿用紙
ファンシーからファインへ
濁点はなぜふたつか
自分を編む
平面と立体 杉浦康平と書物
文学にフレームを与える 菊地信義の装幀
切断する傍点 金井美恵子 『重箱のすみ』
7 間メディア
線的思考 複製論3
あとがき
索引
初出・もとになった原稿
ページネーションのための基本マニュアル
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[著者] 鈴木一誌(すずき・ひとし)
1950年東京生まれ。
グラフィック・デザイナー。
東京造形大学在学中より杉浦康平のアシスタントをつとめ、85年独立。
装幀ばかりでなく、
本文、図版レイアウトを含めた書物全体の設計にたずさわるブック・デザインをしごとの中心とする。
93年から現代用語辞典 『知恵蔵』 の本文レイアウト・フォーマットをめぐって朝日新聞社と著作権裁判を争ういっぽう(99年敗訴)、
96年、デジタル・デザインでページを生み出すための基本ルール
『ページネーション・マニュアル』 を提起し、著作権フリーで公開。
また「文字コード問題」にも積極介入するなど、旺盛な執筆活動を展開、
81年、第一回ダゲレオ出版評論賞を受賞以来、映画評論家としても活躍し、
映画本の造本・装幀も多く手がける。
著書に、2001年 『知恵蔵裁判全記録』(共著、太田出版)、
2002年 『画面の誕生』(みすず書房)などがある。