「場所」と「身体」をつなぐもの
中村良夫
四六上製 328ページ
ISBN-13: 9784894347434
刊行日: 2010/05
定価: 2,625円
◎名著『風景学入門』の著者が提起する実践的「まちづくり」論。
"風景"を通じて考える、日本型都市の創造への道
目次
はじめに——日本文化の円熟のために
第�部 零落した山水都市
第1章 風景の季節——持続社会の富を探そう
1 われわれは都市を育んできたか
2 豊かさはいかに実感されるか——持続する共有の富
3 持続する共有の富は文化となる
4 都市はなんのためにあるのか——都市の大義
●町づくりへのヒント
町の顔をつくる/無用の用
第2章 揺れる異邦人の視線——都市はこう読まれた
1 母国への反視線——イザベラ・バードの日本
2 日本の面影——ラフカディオ・ハーン
3 普遍ヨーロッパから相対主義へ、そして近代を超えて——R・バルトの記号学とA・ベルクの風土学
4 道を踏みはずした日本——アレックス・カー
●町づくりへのヒント
解釈もデザインのうち/町を回遊しよう
第3章 日本の風景は病んでいるか——漂流する反都市
1 面妖な風景
2 都市の風景はどう変わったか
3 零落した山水都市
4 要約不能の町
●町づくりへのヒント
地相を読む/「住めば都」の原理
第4章 風景はなぜ歪んだのか——失われた都市の大義
1 山河に投影する自己
2 イエ共同体の閉鎖性、市民共同体の未熟
3 分断された都市の統治能力
4 フロー偏重の経済運営
5 生産偏重の癖
6 情報化社会の影響
7 近代化の始末
●町づくりへのヒント
夢を紡ぐ古いもの/水辺の値うち/狭間に風景あり
第�部のまとめと補遺
第�部 伝統を継ぐ近代市民
第5章 新しい豊かさを発見した英国——美意識は社会を覆せるか
1 近代風景への不幸な目覚め
2 ユートピアだより
3 アメニティの制度化
4 市民の地声、円満な近代化
5 追いつめられた英国
●町づくりへのヒント
風景は人と人を結ぶ
第6章 西欧アメニティの源流——市民社会の生活感情と規範意識
1 チロルの湖畔にて
2 西欧文明の源流
3 市民共同体の近代化
4 伝統に繋がった近代
5 さて、日本では……——中心市街地を死守せよ
6 内発的な近代
●町づくりへのヒント
町並みをつくる/半公半私の原理、または境界に宝あり/コミュニティ・サロン
第7章 明治の構想力——花鳥風月をこえて
1 遷る風景観
2 明治のベストセラー、『日本風景論』
3 国民国家の情念
4 南方熊楠の残したもの
5 人間中心主義の終わり——風景円熟への道筋
●町づくりへのヒント
山川の連想ネットワーク/神社仏閣を町づくりの絆にしよう
第8章 風土の底力——革新のなかの伝統
1 琵琶湖疏水
2 円満な近代化
3 明治の田園都市論
4 和風の近代都市は可能か——山河襟帯自然に城をなす
5 山水とのたわむれ
●町づくりへのヒント
遣り水を活かす
第9章 大正デモクラシーの風圧圏——無有好醜の系譜
1 原宿・表参道の香り
2 柳宗悦と「無有好醜」
3 垂迹国土観
4 風景の民芸品
●町づくりへのヒント
寅さんはどんな町が好きだった?/使い込むと味が出る町
第�部のまとめと補遺
第�部 転生する山水都市
第10章 お作法としての町づくり——町並みはアートではない、作法美である。しかし……
1 町並みは芸術か
2 秩序か反秩序か
3 しなやかな作法
4 風景という体験——「場所」と「身体」のあいだ
●町づくりへのヒント
余韻と奥行き——日本のアメニティは風流/連句のように……/事毎に問う
第11章 天地人の綾織り都市——天の気・地相・社交
1 名都の条件——風景計画とは何をするのか
2 身体と場所(トポス)
3 場所(トポス)の作法
4 山水都市の匂い——「まちニワ」を仕込む
5 現代都市の山気水脈
6 ニワと家
●町づくりへのヒント
山気水脈の穂先をたぐりよせる/自然を文化へ組み込む
第12章 社交する都市——生活文化を創成する
1 場所(トポス)を活性化する社交
2 生成する場所(トポス)
3 結界の作法は生き残れるか
4 町づくりは決死の道楽である——社交の創造性
●町づくりへのヒント
オープンカフェの原理(都市のなかに開かれて在ること)/広場をつくろう
第13章 円熟の季節——変わる文明の潮流
1 生成する風土
2 風光明媚の地は先端企業のゆりかご——観光を超えて
3 生産性から創造性へ、そして企業誘致から人間誘致へ
4 遊創都市へ
5 都市のオーラ
6 文化の政治力
●町づくりへのヒント
観光とは何か
第�部のまとめと補遺
あとがき 風景という黙示——「場所」と「身体」の亀裂を癒す
参考文献一覧
主要地名・施設名索引