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2010年8月2日月曜日

上野俊哉『思想家の自伝を読む』

上野俊哉『思想家の自伝を読む』
平凡社ライブラリー
2010年7月15日配本、翌日以降書店店頭に並びます。
(地域によって多少異なりますのでご了承ください)
336ページ
定価903円(税込)
ISBN978-4-582-85537-1

■「序章」抜粋

 「自分探し」を口にする学生や若い人に、
 わたしが決まってかけている言葉がある。
 残酷なようだが、「自分探しなんてするな」、
 「探すような自分なんてそもそもあるの?」、
 「自分なんてものを探しているヒマがあったら、
 むしろ自分が出会った他者やモノに徹底してこだわれ」・・・。
 (・・・)
 思想家や知識人の自伝について批評を試みた本書の
 究極の目的は、実はこのことに尽きる。

 この世界はもっと広いということ、
 様々に異なる文化や言語をもった地域には
 実にいろいろな他者たちがいて、
 様々なモノがあることを知ってほしい。
 「自分探し」にやっきになるくらいなら、
 とりあえず先人の試みた「自己についての記述」に
 一通り当たってみたらどうだろう?
 自伝を読むことで、すこしだけ他人の生を生きてみなよ、
 そんなふうに言いたい気分がある。
 自分に関心をもつ、自分を探すなんてヒマがあるのなら、
 人が自己について語った言葉をまず掘ってみな、
 と言いかえれば、もっとわかりやすいだろうか。
 (9-10ページ)


■目次
序章 不良中年が思想家の自伝を読みなおすきっかけ

第一章 書物という他者たちから語る
テリー・イーグルトン『ゲートキーパー』(大月書店)
ジョージ・スタイナー『G・スタイナー自伝』(みすず書房)
コリン・ウィルソン『発端への旅』(中公文庫)

第二章 自己を語ることの策略
ルイ・アルチュセール『未来は長く続く』(河出書房新社)
ジャン=ポール・サルトル『言葉』(人文書院)
ミシェル・レリス『成熟の年齢』(現代思潮社)

第三章 抵抗する自己の生
きだみのる『人生逃亡者の記録』(中公新書)
大杉栄『自叙伝』(岩波文庫)
林達夫『歴史の暮方』(中公文庫/中公クラシックス)

第四章 死ぬことを学ぶ、自己を語りはじめる
エドワード・サイード『遠い場所の記憶』(みすず書房)
谷川雁『北がなければ日本は三角』(河出書房新社)

文献案内/あとがき

■著者紹介
上野俊哉。1962年生まれ。
刊行当時、和光大学総合文化学科表現学部教授。
専門は文化研究、メディア論、社会思想史など。
和光大学ウェブサイト掲載の自己紹介文(2010.8.2確認)。
「専門としているのは、文化研究、メディア論、社会思想史など。ずっとロックやレゲエを聴いて育ってきたし、マンガやアニメをよく見るので、そうした
大衆文化やサブカルチャーについての研究や批評も守備範囲のうち。教育姿勢としては、あたりはキツいが、やる気と努力の人には甘い。

 趣味は野外のテクノパーティやハコで踊ったり、お皿回しの真似事(DJごっこ)したり、クルマをかっとばしたり、B級なんちゃってなりに料理したり
すること・・・など。

 ここ数年は、日本の大衆文化/サブカルチャーが日本の外からはどのように見られているのか? また日本のアニメ、マンガ、特撮、テクノ、グラフ
ティ・・・などから引き出せる考え方って何だろう? といったことを、これまでの学問や思想、批評とつきあわせながら考察しようとしている。

 坂口安吾や三島由紀夫をゴスやパンクの'かたわらで'考えるとか、戦中戦後の日本の思想家たち(中井正一、花田清輝など)の「日本文化」についての目線をサブカルチャーの視点から読みなおす、といった作業にとりくんでいる。

 放っておくと、ふだんでもアニメや特撮の台詞や身ぶりを、日常の真面目な場面でぽろっと出したりする。「萌え」というよりは「燃え」系の人格だが、ときおり客員教授を務めるカナダのマギル大学などでは、きっちり真面目に「オタク」や「萌え」を英語で定義して解釈したりもしている。

 自分の好きなことでお金がもらえたり、趣味を仕事にしたりするのは、大変なこともあるけれど、その方が明らかに人生は楽しい。なので、若いうちに、たとえ漠然とでも、自分の人生=生活の将来についてヴィジョンをもってみるといい。日本以外の社会では普通のこういうことが、だんだんこの国/社会では異例なことになっていることに、どういう事態かと頭をひねっている。

 馴化された家畜のように生きるより、おもしろ、おかしく、はみだした動物や植物のように生きよう。 」

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