出版社: 三元社 (2009/11)
ISBN-10: 488303254X
ISBN-13: 978-4883032549
発売日: 2009/11
商品の寸法: 21 x 15.6 x 3.8 cm
■内容紹介
「読むこと」そして「見ること」で得られるイメージの相違と連関についての議論は古代より続き、いまも多彩な主張が乱立している。それらを精査し、「読書とイメージ」「視覚的隠喩」「小説の映画化」「"物語る絵"のナラトロジー」「小説と挿絵」の五つの視点から、ことばと形象の交叉がもたらす経験とその歴史的変遷を、多くの実例をひきながら問いなおす。
http://djfumiya-in-the-mix.blogspot.com/2010/03/blog-post_1057.html
http://franzkafka1883-1924.blog.so-net.ne.jp/2010-03-29
■目次
序 7
第�部 ことばとイメージ
第1章 読書とイメージ 12
1 観念とイメージ 12
イメージ化の読み/12 近代認識論における「イメージ」/14
詩と絵画のパラゴーネ/16 詩の絵画的描写/18 バーク/22 レッシング/25
2 知覚とイメージ 27
ウィトゲンシュタイン/27 イメージと知識/28 イメージと知覚/31
3 意味とイメージ 34
意味の規格型と素性/35 イメージ価と「概念的——ペグ」/37
4 読書とイメージ 39
サルトル/40 イメージの「効果」/42 ホメーロスの描写/45
第二章 視覚的隠喩は可能か 48
1 転義とモデル 48
隠喩の代置理論、比較理論/49 隠喩の相互作用理論/50
2 隠喩と類比 53
認識論的隠喩論/53 類比による世界認識/55
3 隠喩と象徴 57
記号論的隠喩論/57 隠喩的例示/58 暗示と象徴/61
4 隠喩の述語限定理論 64
一時的な言語ルール/64 アスペクトの認知/66 述語限定理論/68
5 隠喩と直喩 71
比較と同定の陳述文/72 恣意的直喩/74 隠喩の「含み」/76
6 隠喩とイメージ 78
隠喩のイコン性/78 非言語的隠喩/80
7 絵画的隠喩 83
視覚的ジョークとカリカチュア/83 視覚的駄洒落/86
合成イメージ/89 広告の発話/92
8 映画的隠喩 95
隠喩的モンタージュ/96 映画的文彩/98 説話外的なイメージ/101
第三章 詩と絵画のパラゴーネ 104
1 ことばの優位 104
エクフラシス/104 パラゴーネ/105
2 イメージの形而上学と解釈学 107
イコノグラフィーとイコノロジー/107 ベーム「イメージの解釈学」/108
ベッチマン「美術史解釈学」/111 イムダール「イコニーク」/113
3 「露出した意味」 115
バルト「逐字的メッセージ」/116
4 知覚経験と名指し 118
ブライソン「図像的なもの」/118 構文的な絵画/121 心理学的唯名論/124
5 視像の情熱、形態の欲望 126
位相化/127 言語のテクスチュアと絵画のテクスチュア/128
第�部 小説の映画化
第四章 物語と描写 132
1 描写の位置 132
映画化への欲望と批判/132 補助的言説としての描写/135
描写の近代とリアリズム/137
2 テクスト・タイプと「奉仕」関係 139
「物語に奉仕する描写」・「描写に奉仕する物語」/140
3 意味の統辞法、知覚の統辞法 142
明示的な描写/143 モンタージュ——知覚の統辞法/145 描写の物語/147
4 描写の物語 149
心的イメージと知覚映像/149 小説の描写/151
映画の描写/152 「効果」の対比と異同/154
第五章 語りのモード 156
1 語りの「態」 156
物語言説と物語内容/156 「不可視の観察者」と語り手/158
2 語りの「視点」 161
〈背後から〉の視点/162 〈ともにある〉視点/165 内面のリアリズム/168
〈情況〉の視点/173 〈外部から〉の視点/177 物語の叙法のパターン/178
3 映画における語りの視点 180
1.〈全知〉の視点、〈情況〉の視点/181
2.〈ともにある〉視点/185 ● 三人称と一人称/188 ● 「一人称映画」/190
3.〈外部から〉の視点/191 語りの視点の混合と移行/193
第�部 「物語る絵」のナラトロジー
第六章 「物語る絵」の叙法 196
1 絵画の「物語」 196
タブローという装置/196 絵画のナラトロジー/200
2 物語言説のメディア——中世の「物語る絵」 202
ミニアチュール/202 ビザンチンの壁画/205
ステンドグラス/207 聖なるテクストの優位/210
3 エクフラシスの修辞学 211
絵解きとしてのエクフラシス/211 ゼウクシス的イリュージョニズム/213
イコン的イリュージョニズム/215 超越的な〈全知〉の視点/217
4 描かれた世界の自立 220
ジョットの革新/220 「含蓄ある瞬間」/223
ヒューマニストのエクフラシス/225 アルベルティの「構図」と遠近法/227
ヴァザーリの美的なエクフラシス/228
5 指示者のモチーフ 230
超越論的〈全知〉の視点/230 修辞的イリュージョニズム/232
美的イリュージョニズム/234 「劇的クロース・アップ」/236
6 画中の代理人——「母と子」と「後ろむき」のモチーフ 239
奥行き方向の劇的緊張/239 「母と子」のモチーフ/242
「後ろむき」のモチーフ/245
7 美的イリュージョニズム 248
描写的リアリズム/248 ディドロの美的なエクフラシス/251
美術カタログ/255 イメージに奉仕することば/257
8 「没入」のモチーフ 259
〈情況〉の視点と絵画的描写のリアリズム/259
没入のモチーフと内面性/262 「演劇的」と「タブロー」/265
9 仮象論の逆説と〈ともにある〉視点 269
観者の現前と不在のパラドックス/269 観者の美的な存在情況/271
肉眼の「視角」と語りの「視点」/273 物語る絵の〈ともにある〉視点/276
交叉する視線のドラマ/280
10 情況のタブロー 282
メロドラマ/282 明暗法——光の遠近法/284 物語る絵の叙法のパターン/286
1.超越的〈全知〉の視点/287
2.超越論的〈全知〉の視点/287
3.〈ともにある〉視点、〈情況〉の視点/288
第七章 近代絵画における語りの視点 290
1 小説と絵画の遠近法 290
ケンプの受容美学/290 「観者の位置」に自覚的な構成/290
「多重遠近法的」な構成/292 小説と絵画のパラレリズム/294
2 目撃者の「視角」と語りの「視点」 299
語りの「態」と「叙法」/299 目撃者と「内包された読者」/300
カメラマンと映画監督と画家/305
指示者のモチーフ、後ろむきのモチーフ/306
3 〈ともにある〉視点の画面構成 309
エッグ《過去と現在》/309 クリンガー《母》/312 スケッチの美学/314
第�部 小説と挿絵
第八章 近代小説と挿絵 318
1 挿絵の歴史 318
十五世紀/319 十六世紀/320 十七世紀/321 十八世紀/323 グラヴロー/327
2 形象のディスクール——グラヴロー 330
ルソー『新エロイーズ』挿絵/330 挿絵の記号論的分析——バシィ/333
語りの光源・サン=プルー/336 読者の反応——ラブロスの分析/338
3 私的な情感——コドウィエツキーとストザード 340
コドウィエツキー/340 ストザード/343
4 近代的叙法の成熟 346
ターナー——廃墟・ゴシック・ピクチャレスク/346
ビュイックとクルックシャンク——ビネット/348
小説の挿絵と舞台のタブロー/351 挿絵の映画的手法/352
ラファエル前派/355 内省の挿絵に対する批判/357
第九章 明治期小説の「改良」と挿絵 361
1 小説の「改良」 361
坪内逍遙『小説神髄』/362 内面のリアリズムと文体/365
制度としての漢文体/368
2 『当世書生気質』 370
新味と限界/370 二葉亭四迷『浮雲』/374
3 言文一致運動 377
語尾と待遇感情/377 「である」体の採用/379
4 逍遙以後の小説 381
「人間派」と「没理想」/381 西洋近代叙法の例外的さきがけ/383
「自叙躰」の流行/385 三人称〈ともにある〉視点の確立/390
5 日本における「物語る絵」 393
絵巻の文法/393 江戸の戯作本/396 洋風画/398
6 戯作下絵から小説挿絵へ 400
来日画家の影響/401 洋風挿絵受容の限界/404 新聞小説と挿絵/407
浮世絵系挿絵/409 容斎派の画家たち/412 洋画家たちの参入/413
7 小坂象堂と自然主義 415
日本画の自然主義/415 无声会/419
8 梶田半古と新風 422
烏合会/422 梶田半古の日本画/424 富岡永洗と梶田半古/426
右田年英と松本洗耳/429 新旧挿絵の混在/431 梶田半古とアール・ヌーボー/433
9 鏑木清方の小説経験 437
西洋画の翻案/438 情況のタブローと〈ともにある〉視点/441
註 445
あとがき 509
事項索引 1
人名索引 7
参考文献 13
■西村 清和
1948年京都府生まれ。東京大学文学部美学芸術学科卒業、同大学院修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。著書—『遊びの現象学』(勁草書房、サントリー学芸賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)